今なお、前監督のハリルホジッチ氏の訴訟問題が報じられている。監督交代の影響が残る中、ファンの日本代表への信頼は揺らいでいる。大会そのものに対する関心が薄れているファンも少なくないだろう。本大会直前であるにもかかわらず、選手選考にまつわる憶測などがピッチ外か聞こえてくる。
■あくまでも代表チームとして勝利を
それでも、W杯がいつの時代も夢の舞台であることに変わりはない。ここに至る経緯がいかなるものであれ、サッカーファンであれば自国の代表チームには少なからず愛情を持っているのではないだろうか。
代表チームは今月21日から千葉県内でガーナ戦へ向けた合宿を開始した。連日、国内外から選手が合流し調整を行っている。
23日に合流を果たした槙野智章(浦和レッズ)は「自分のアピールというよりも、チームがうまくいくためにやるべきことをやる」(日本サッカー協会ホームページから)と、今回の合宿に向けて意気込んだ。監督交代後の初の合宿となり、各選手のコンディションはバラバラだが、目指すべきゴールは選手27人全員にとって同じだろう。
最終メンバー決定を控えるテストマッチとは言え、選手たちにはとことん勝負にこだわってトライしてもらいたい。監督交代劇につながったと言われる3月の欧州遠征の2試合や、大敗を喫した昨年12月の韓国戦のイメージがいまだに脳裏から離れずにいる中で、多くの雑音を払拭する必要がある。青いユニフォームが勝利する姿は、本大会直前に最も見たいものだ。
■ガーナ戦に挑む西野朗監督への期待
指揮を執るのはワールドカップに挑む2人目の日本人監督となる西野朗監督だ。2016年から日本サッカー協会技術委員長としてチームを見続けてきている。今回は「緊急登板」となったが、決して悲観的な要素ばかりではない。
1996年にアトランタ五輪監督を率いた際には、グループリーグを通してさまざまな意見を主張する若き選手たちを束ねた。最強と呼ばれたブラジル、そしてヨーロッパの雄・ハンガリーから勝利をもぎ取ることができたのは、勝つことだけを目指し自らの信念を貫いた結果とも言える。
西野監督にとってあの時以来の日の丸を背負うことになるガーナ戦は選手のパフォーマンスを引き出すのが先決ではある。それとともに、西野監督自身の覚悟と勇気を感じさせる試合になること、さらにはわずか1試合とはいえロシアへ向けてのチームの方向性を見出せる試合になると信じたい。
5月30日、日本代表対ガーナ代表。この試合は日本サッカーの未来と可能性を大きく変える試合となりえる。そしてそのカギを握るのは紛れもなく西野監督の勝負師としての手腕だ。(佐藤文孝)