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本好きオヤジの幸せ本棚(45)

◎オヤジ人生にプラス1のこの1冊
『沈黙の町で』(奥田英朗/朝日新聞出版 1890円)

 本作の母体は2011年5月から'12年7月にかけて朝日新聞に連載された。これに加筆修正し、今年2月に単行本化されたのである。大津市中学生いじめ自殺事件は、連載開始より後になる'11年10月に起きた。
 大々的に各種メディアで報道されるようになったのは連載の終わりごろだから、作者が即席で時の流れに乗って小説の構想を練ったわけではないことがわかる。大津の事件は最も突出した例の一つであり、いじめ自体は以前から深刻な普遍的問題として私たちに意識されていた。
 ストーリーは北関東の地方都市にある中学校で2年生男子の死体が見つかるところから始まる。テニス部の部室の屋根から転落したようだ。警察が捜査に乗り出して間もなく、彼がいじめに遭っていた事実が発覚する。それを苦にした自殺か、エスカレートしたいじめの末の殺人か…。明らかにミステリー小説の体裁を取っている。しかし、いじめっ子たちから犯人を見つけ出す、という単純なヒューマニズムを前面に打ち出した物語ではない。もっと根深い問題、人間は“いじめ、いじめられる”関係から逃れられない生き物であることをテーマとして掘り下げ、中学生たちの日常を描くエピソードが生々しく随所に盛り込まれている。
 発展途上であるがゆえ、極端な純粋さと残酷さを共存させている年代の特性を私たちはもっと知るべきだ。
(中辻理夫/文芸評論家)

◎気になる新刊
『円谷プロ全怪獣図鑑』(円谷プロダクション/小学館・5250円)

 4月に創立50周年を迎える円谷プロ。この大図鑑には、この間に生み出された怪獣約2500体すべてが収録されている。初回限定で「全怪獣図鑑クリアファイル」「大怪獣Wパノラマポスター」「歴代地球防衛隊マークシール」付きだ!

◎ゆくりなき雑誌との出会いこそ幸せなり

 ニュースや情報番組でしきりに語られる「遷宮」という言葉。これは、神社が社殿の修復のため、御神体を別の本殿に移すことだ。今年は伊勢神宮と出雲大社が、偶然にも同じ年に遷宮を行うことで話題となっている。
 この遷宮の儀式を詳細に解説したのが、『なるほど 伊勢神宮と出雲大社のすべて これがご遷宮!』(GAKKENムック/780円)。遷宮の意義・方法・スケジュールなどがこと細かに綴られていて、“なるほど”のタイトル通り、とてもわかりやすい。
 伊勢の遷宮は20年に一度、出雲大社に至っては60年に一度の大事業だそうだ。出雲の次の遷宮に、中高年のオヤジ世代が巡り会うことは、まず不可能だろう。
 この機会に日本の二大神社の伝統祭事に触れる、その手引きとして、ぜひ読んでおきたい1冊だ。
 社殿の造りを図解した記事を読むだけで、いにしえの日本人の心を知ることができる。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)
 ※「ゆくりなき」…「思いがけない」の意

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