そこで、大腿4頭筋の筋力が齢相応に備わっているかどうかのチェック方法があるので、まずは試していただきたい。
40〜50代の読者は、高さ40センチの椅子を用意して、片足でゆっくり立ち上がってみてほしい。ここでふらつくことなく立ち上がれれば問題はないが、もし、スムーズにできなければ筋力が落ちている証拠だ。
チェック方法はもうひとつある。目をつぶったまま、片足立ちしてどれだけいられるか。中高年なら30秒が目安だが、10秒程度だった人は、足腰の筋力が弱っている証拠だ。
さらに、筋肉の弱体化を予防するトレーニングを紹介しよう。開眼片足立ちである。このトレーニングはバランス能力を高め、転びにくくなって歩くのが速くなり、階段の上り下りがスムーズになる。
まず、片足を床につかない程度に少し浮かせて、1分間立つ。一方の足が終わったら逆の足もする。足の裏に意識を集中するとよい。立っているときに背筋を伸ばし、腹や背中の筋肉にも力が入るように心がける。バランスを失って転倒しないよう、テーブルや椅子など、必ず何かつかまる物がある場所で行うこと。このセットを1日3回行うと、筋力とバランス力がついていく。
ただし、高齢者にとって朝は一日の中で運動に最適な時間帯とはいえない。朝の清々しい時間帯にウオーキングをと一念発起しても、朝は副交感神経と交感神経が入れ替わる時間帯。しかも朝は血圧が上がり、心拍数も増えている。そこへ運動による負荷が加わると、心筋梗塞や脳卒中など思わぬ血管の事故が起きやすくなるという。
したがって、できれば午前中の時間は避け、時間に余裕のある夕方以降にした方がいい。
「ロコモティブシンドロームで最も大切なのはこれまで説明したように予防です。特に65歳以上になったら、自分の生活を振り返って危険を回避するように工夫をすること。高齢者は骨密度が低くなっていますから、転べば簡単に骨折してしまう。しかも、一度折れると後に引く。人生最大の苦痛は運動器官の痛みであることに留意すべきなのです」(田村氏)
今からでも遅くはない。常にちょっとした運動を心掛けたいものだ。