昨年9月から行われた南アW杯アジア最終予選も17日の豪州戦(メルボルン)がラスト。相手より勝ち点2下回る日本は勝たなければ1位通過できない状況だった。豪州は過去7試合無失点という強固な守備を誇る。岡田ジャパンはその堅守をこじ開けるところから始める必要があった。
大仕事をやってのけたのが闘莉王。前半39分、中村憲剛の左CKに反応した彼は、巧みな動きでDFを振り払い、豪快なヘッドをお見舞い。英プレミアリーグ・フラムで活躍する守護神・シュウォーツアーも大の字になって悔しがるほど、この一撃は痛快だった。
日本はこのリードを守りたかったが、かつて大宮、京都を率いたピム監督は容赦しなかった。「前半は守備的になりすぎた。もっと前に出ろ」と選手たちを鼓舞。後半は完全に試合を制圧する。そしてセットプレーからの2ゴールで日本を奈落の底に突き落とした。その選手こそ、ドイツW杯初戦でも2点を挙げた日本キラーのケイヒル。
後半32分の逆転弾を防げなかった阿部勇樹は「一番大事なところで足が出なかった」と反省しきり。肝心の場面で勝負弱さをさらけ出したのだ。
この日、岡田監督は中澤佑二の欠場に伴い、ベテランの山口智を初先発させるつもりだった。が、豪州が2006年W杯の日本戦に出たケイヒルら6人を先発させてくると知って怖くなったのか、土壇場で計算できる阿部に変えた。
その阿部が致命的なミスをしたのだから、采配を批判されても仕方ない。期待した橋本英郎と今野泰幸の両ボランチも守備一辺倒でボールが落ち着かない。松井大輔、玉田圭司、岡崎慎司という小兵FWを前線に並べる形も不発。指揮官の選手起用はことごとく裏目に出た。
「今の日本代表は中村、遠藤(保仁)、長谷部(誠)、中澤の誰か1人でも抜けるとチーム力がガクッと落ちる」とトルシエ元日本代表監督も指摘する通り、今のチームは間違いなく選手層が薄い。頭の固い岡田監督が選手を固定してきたことも、主力と控えの差が広がる原因になっている。
その点、豪州はタレントが豊富だ。今回もキューウェルら6人が出なかったが、大半の選手が欧州トップリーグでプレーしていて底力があった。
ピム監督も「我々には経験豊富な選手がいる。私自身も岡田さんより世界を知っているつもりだ」と発言。日本がW杯4強を狙うのがおこがましいとでも言わんばかりだった。が、2002年日韓大会でヒディンク監督の下、韓国の4強入りを演出した同氏の言葉だけに説得力があった。
このレベルの相手に踏ん張れない日本に成功はない。選手選考を含め、岡田監督がもっと斬新な何かをしない限り、日本代表の躍進など夢のまた夢だろう。