謝礼品は、多くの自治体が寄付金の額の4割前後の価値がある特産品などを贈ってくれているようだ。つまり、1万円を寄付すると2000円を超える分の8000円分が控除されて戻ってきて、さらに4000円前後の謝礼品がもらえるということ。
慢性的な財政難に苦しむ自治体からしてみれば、ふるさと納税は収入を増やす千載一遇のチャンス。昨年は約930の自治体が、寄付の謝礼品として地域の特産品を贈呈したという。それらには、地域ブランドの米や牛肉、豚肉はもちろん、カニなどの魚介類、果物、野菜、そしてお酒と地域自慢の一流品が勢ぞろいしている。ユニークなところでは、鉄道模型や手づくり工芸品、温泉施設の利用宿泊券やフィギュア、宝くじを贈ってくれるところもある。
中でも驚いたのは、100万円以上の寄付金で全国指定の場所で熱気球の出張係留を行い、100人が地上30メートルからの眺めを楽しめるという企画。あるいは寄付金300万円で、牛一頭分の肉を進呈という自治体もあった。
このように、それぞれの自治体が特産品はもとより、アイデアを練った謝礼品が目白押し。ふるさと納税は百貨店以上の品ぞろえなのだ。
一方で、これまでは所得税と住民税から寄付金の控除を受けるには、確定申告が必要だった。ふるさと納税を知ってはいても、確定申告の手間を考えて二の足を踏んでいる。そんな人も多いはずだ。
そこで、政府はさらなる地方創世を狙った策を立案した。昨年末に発表された『平成27年度税制改正大綱』だ。これにはふるさと納税をより深く根付かせるための施策が盛り込まれている。
まずは、ふるさと納税の最大のネックであった寄付金の確定申告の手間を省くこと。今までは寄付した本人が、寄付をした自治体から寄付金額の領収書を受け取り、翌年に確定申告を行っていた。
しかし来年(今年度分)からは、寄付を受けた自治体が税務署など関係先に、その領収書を送付する仕組みとなる。冒頭に意見を聞かせてくれたサラリーマン氏のように「確定申告が面倒だ」という人には大変ありがたい変更だ。
さらには、減税の対象となる寄付金の上限を2倍に引き上げるという。
寄付金の2000円を超える分が所得税や住民税から減額されるわけだが、その上限は家族構成や所得で違うが、おおよそ住民税の1割程度。それを2割程度まで引き上げようというもの。例えば夫婦と子ども1人で年収500万円の世帯なら、これまでは年3万円までの減額だったものが今年度分からは6万円になる。
ふるさと納税は人口が集中する大都市圏の税収を、より広く地方に配分していくための制度でもある。人口減に加え、国の補助金も限られる自治体にとって、寄付金は是が非でも集めたいところ。自助努力を強調し、地方創世を唱える政府にとっても有効に活用したい施策なのだ。