「オープン戦は不振でした。不振の原因は新球・スプリットを習得しようとし、それをテストしていたため。スプリットは田中の代名詞であり、メジャーでも効果を発揮しています。前田の右肘の違和感はスプリット習得の影響かもしれない。前田の不振と同時に、メジャースカウトの間で囁かれるようになったのは、巨人・菅野智之の評判です。『菅野の方が欲しい』の声もあります」(球界関係者)
“調整不足”により、本来のピッチングができていないことは、本人が最も悔やんでいるはず。過去、米球界に挑戦した日本人投手の中には「日本球界の最終年はテキトーに休む」の傾向も見られたが、前田は違う。優勝に向け、チーム一丸となっているシーズンだからこそ、今年は休まないと決意しているような節も感じられる。
「過去9年の交流戦で広島は96勝134敗10分けと大きく負け越している。例年のように苦しい戦いが続き、このまま失速するとの予想も聞かれます。中盤以降は、これまで大学のリーグ戦しか経験したことのない大瀬良大地、久里亜蓮の疲労が表れ、バリントン、ミコライオらを含めたリーグトップの防御率を誇る“投手王国”に暗雲をもたらすというのです」(前出・記者)
太股直撃弾も、他投手が万全ならば一軍登録をいったん外れて治療する選択もできた。しかし、前田は自身の戦線離脱がチームの勢いを失速させることもわかっている。だから、「万全でなくても…」と闘志を内に秘め、投げ続けているのだ。
「自身の米挑戦とチームの優勝、どちらを選択するかと聞かれれば、前田は後者です。これは黒田博樹から引き継いだ“カープ魂”ですよ」(同)
前田は球団の意向も汲んで米挑戦を先延ばしにし、来季は万全のピッチングで自身の評価をピークに持っていこうとしている。
ポスティングシステムの最高落札額2000万ドル(約20億円)は、チーム総年俸にも匹敵する。チームを思う前田の“カープ魂”は、鬼門の交流戦失速阻止にもつながっているのだ。