「次の選挙は民主党にとって分裂選挙。その結果を踏まえて今度は自民党も分裂し、双方入り乱れての政界再編成になりますよ。野田首相のグループが自民党の谷垣派と組み、民主党を割った小沢さんが自民党の親小沢系と組む−−というふうにね。それにしても、もし野田−谷垣の政権ができたとしたら日本はどうなるのでしょうかね…」(ある前衆院議員=大阪選出)
こうなると、気になるのが地方から中央を狙う噂の石原慎太郎新党、愛知の河村たかし新党といった、ローカルパーティー系の新興勢力だ。中でも注目されるのが、橋下徹大阪市長率いる『大阪維新の会』の動向。現時点で橋下代表本人は国政に進まないことを明言しているが、維新の会としては「日本の国の仕組みを変えるために」国政進出へ乗り出す向きだ。
「向かうところ敵なしの感がある維新の会ですが、現実に国政に名乗りを上げるとなると克服しなければならない問題がある。政党として選挙をフルに戦うには、現行法上では5人の現役国会議員が必要になる。オール新人候補の今のままでは、小選挙区、比例区での重複出馬が認められない等のハンデを負います。そこで維新の会は、『次の選挙は維新塾のメンバーだけで戦う』と語る一方で、他党現役議員をスカウトしての勢力拡大を狙っています。最大のターゲットは、そもそもの出身母体である自民党。そして、一回生議員がグラついている民主党ですね」(政治部記者)
当然ながら、自民、民主の両党とも引き留めに懸命だが、維新の会が企む選挙狙いの裏技はこれだけではない。話題性と議席の確保が確実に期待できる、大物タレント候補の擁立だ。
維新の会自体は「タレント候補はいらない」と明言し、自前で旗本を養成すべく政治家養成に力を入れているが、『維新塾』に集まったメンバーには“橋下人気”へのあやかり組が多く、「最終選抜の結果を見ないことには何ともいえないだろうけど、戦力としてまだ期待できない」(維新の会シンパ)というのが現状のようなのだ。
「維新の会の幹部とその周辺は、市議会、府議会選挙と違って、国政レベルでは維新の会の名前だけでは大きな飛躍は望み得ないとの危機感を持っている。『維新塾』は未知数という状況の中で、見直されているのが“有名人候補擁立”というわけです」(前出・政治部記者)
維新の会に近い筋によれば、すでに数名の候補者にアプローチし、その感触を探っているという話もあるという。
「これまでに名前が挙がっているのは、野球解説者の江本孟紀氏、東国原英夫前宮崎県知事、キャスターの辛坊治郎氏、それに、やしきたかじんといったところです。見ての通り、最近ではエモやん以外に新しい名前はありませんね。逆に言えば、それだけ橋下さんがご執心ということなんでしょう」(スポーツ紙記者)
江本氏の名前が出た背景には、'04年、同氏が大阪府知事選に出馬した際の動きがある。
「太田房江知事(当時)に対抗して出馬した江本氏の選挙参謀を務めたのは、太田支持の自民党に造反した松井一郎府知事(当時府議)のグループでした。江本さんは落選しましたが、その時の同志が、後の維新の会につながっています。つまり松井氏たちは今、江本氏を担ぎ、やりたかったことを橋下氏を担いでやっている。当時の無念があるから、名前が挙がったのかもしれません」(府政記者)