声のかすれは、正式には嗄声(させい)と呼び、声の音質の異常を意味しているといわれる。喉には、食べ物の通り道「咽頭」と空気の通る「喉頭」がある。声を出す機能は咽頭の中央部にあるヒダ状の声帯。ここに炎症などの異常が起きると、声帯の振動に影響が出るため、声がかすれる。
一般的には、カラオケなどで歌い過ぎで声帯を酷使したり、歌手や教師、アナウンサーなどが仕事で酷使すると、声帯が炎症、むくみを起こし声がかすれたり、しわがれるという。
他に、タバコの吸い過ぎや酒の飲み過ぎでも同じように声が出にくくなる。タバコに含まれるタールは気管支を刺激するため、声帯に炎症が起きる。とくに中年以降の喫煙者になると、声帯がむくんで腫れることで、声質が変わってしまう人が増える。アルコール度数の高い酒も、ノドに炎症を引き起こし、同じように声帯に異常が起きる。
しかし何と言っても、中高年になると避けて通れないのが、加齢による声の変質だ。外見に加えて声のかすれなどで、いっそう年寄りに見られ意気消沈…という経験をお持ちの方は少なくないはず。
「顔のしわはともかく、声はまだ、こんなものじゃない。もうちょっとスッキリした声が出たはずだけど、風邪かな…」
当初はそんな風に思っていたというのは、東京・杉並区内で印刷業を営む小松司さん(52)だ。
「私は酒も飲みますが、量は普通。カラオケも業界の集まりの際、仕方なく歌いますが、喉が壊れるほど歌うなんてことはありません。なのに、なぜこう、かすれ声になるんですかね。ただ、最近わかったのは、パソコンと長時間向かい合うことがありますが、その後に声が出にくい。枯れるのではなくて、喉チンコが屈いてしまう感覚で声が出ない。電話の相手から声が変だよ、と言われるし、それで医者に相談に行ったわけです」(小松さん)
これに対し、「声帯は筋肉です。だから、足腰と同じように衰えますよ」と言うのは、府中市の東京都多摩総合医療センター・耳鼻咽喉科の富樫亮一医師。
富樫医師によると、加齢とともに声がかすれたり、弱くなったり、高い声が出にくくなったりするのは身体の変化と同じように“声の老化”にあたり、小松さんの場合もこれに当てはまるというわけだ。
声は「声帯」が振動することで発生する。声帯は左右から喉を塞ぐような構造になっており、粘膜に覆われている。呼吸をしているときは、声帯が左右に開いているため声は出ない。声を出そうとするときは声帯が閉じた状態になり、そこを呼気が通過することで、声帯が細かく振動、声がでる。そのときの声帯は、1秒間に100〜400回振動するといわれる。
だが、何らかの原因で声帯が上手く振動しない場合、声がかすれてしまう。その場合の原因として「声の炎症」「声帯の萎縮」「声帯のポリープ」「喉頭がん」「咽頭マヒ」などが考えられるという。