日本、インド両政府は先ごろ、原発輸出の前提となる原子力協定の早期締結で合意した。国内で高まる“脱原発”の機運をあざ笑うかのような積極攻勢の裏には何があるのか。
「今、世界で稼動中の原発は400基超ですが、今後20年間で倍増の800基に膨らむ見通し。ところが、政府間の原子力協定がないと民間企業は単独で参入できない。だからこそ熱い視線を送る原発メーカーを支援すべく、日本政府が前面に出ているのです」(関係者)
平均的な原発は建設費が1基約5000億円。今後20年間で400基建設すれば200兆円に達し、原発メーカーには垂涎の的だ。とりわけ成長著しいアジア諸国は経済成長に伴う電力増に対応すべく、計画段階だけで優に100基を超える。その半分を占めるのがインドで、内30基はいち早く原子力協定を結んだ米英などの有力メーカーに割り当て済み。残りの“果実”に注目したのが安倍政権だ。早ければ安倍首相は来年1月にもインドを訪問し、協定に署名する。
東芝、日立、三菱重工などの原発メーカーが商談成立にこぎ着けるのは、協定が国会で承認された後になるが、問題は国内でいまだに脱原発運動が燃え上がっていること。これでは世界の目に「日本は二枚舌を使っている」と映る。
「政策としての原発輸出に大きく舵を切った時点で、政府は“殺し文句”を用意している。『中国や韓国の粗悪な原発より、優れた技術力を誇る日の丸メーカーの方が安心』とアピールしているのです。それなりの説得力は持ったと思いますよ」(原発メーカー)
原発事故を棚上げした“安心作戦”だけに、各国が本当にスンナリ受け止めるかは定かではない。