関東中央病院脳神経外科担当医はこう説明する。
「片頭痛を引き起こすメカニズムは、頭部の血管が拡張し炎症を起こして痛みが発生するものですが、その原因には幾つかの説があります。一つは“血管説”。頭部の血管が拡張することによって頭痛が発生すると考えられるものです。もう一つは、脳神経の中で最も大きい三叉神経(顔面周辺の感覚をつかさどる)が関与している説。何らかの要因によって三叉神経が刺激され、三叉神経の末端から血管を拡張させる作用を持っているさまざまな神経伝達物質が分泌されるのですが、それらの働きで拡張した血管や発生した炎症で神経が刺激され、激しい痛みが出るというものです。また、脳内血管の収縮・拡張を助けるセロトニンも神経伝達物質の一種ですが、その働きが鈍ると片頭痛が起きてしまいます」
いずれも頭の片側、または両側など、頭が脈打つようにズキンズキンと痛む。発症頻度は、人生で数回しかない人から、月に1〜2度の人、週に1〜2度の頻度で発作を起こす人などさまざま。いったん痛み出すと寝込んでしまう、あるいは仕事が手につかないなど、日常生活にも大きな支障を来すことがある。
また、頭痛は必ず何か他の症状を伴って表れるという。吐き気は約90%の人に現れ、嘔吐は約3分の1で起こる。また多くの患者は、光に過敏になったり、音声恐怖症、匂い恐怖症などの感覚の過剰興奮に伴い、全てを遮断して暗い静かな部屋に籠ろうとする。
「頭痛の間の症状として、視界のボヤケや鼻詰まり、下痢、多尿症、発汗などが顕著になり、こめかみの血管の隆起、首のこりや圧痛といった症状も起きます。日本人の約8%がこれらの症状に悩まされているというデータもあって、男性より女性に多く見られるのも特徴とされます。その数は男性の4倍も多く、理由として、多くの専門家は頭痛に女性ホルモンが影響しているとみています」(健康ライター)
しかし、片頭痛は検査でわかる病気ではないため、症状をできるだけ正確に医師へと伝えることが重要になってくる。怖いのは脳腫瘍やくも膜下出血など、生命に関わる病気が原因となる頭痛もあることだ。
「医師が片頭痛であるかどうかを診断する根拠にしているのは問診で、これを最大の情報源にしていますが、その中でハッキリしているのが頭痛の前兆を訴える人が20〜30%もいることです。よく知られている症状は、頭痛が起きる30分から数時間前に目の前にチカチカと輝く光が現れ、視野の中心から片隅にかけて部分的に見えにくくなる。これは閃輝暗点(せんきあんてん)と呼ばれ、片頭痛の特徴的な前兆です。普通は60分以内に前兆現象は治まりますが、その後、1時間前後に、片頭痛の本番が始まる。ただしこれも不規則で、数時間後に遅れて発症したり、そのまま前兆だけで終わってしまうケースもあります」(東京社会医療研究センター・片岡恵一医師)