キャンプ序盤でいきなり、昨季最多勝の金子千尋を欠き、指揮官に就任して以来、ずっと「弱点!」と指摘してきた捕手難もしっかり補強してもらえない。T-岡田も名実ともに『主砲』となった重責のせいか、昨季ほどの爆発力はない。
しかし、岡田彰監督(53)はこうした事態を予測していたのではないだろうか。一般論としてエースを欠いた時点で、首脳陣、フロントは慌てる。右肘遊離軟骨の除去手術により、全治2、3カ月と発表されたとき、岡田監督は先発ローテーションの再編に徹した。捕手の補強が遅れたことには怒ったが、金子の抜けた穴を埋める補強がされていないことについてはひと言も“愚痴”を言わなかった。
岡田監督はオリックスの中堅、若手を一人前にすることを最優先に考えており、また、フロントも「早期の優勝圏内浮上」までは求めていないのではないだろうか。
「昨季、オリックスは交流戦1位でした。24試合で16勝を挙げており、今季、ここで盛り返せなければ…」
ライバル球団の偵察部隊からは、そんな分析も聞かれた。
28試合を消化した時点で「連勝」が1つもないのは痛いが、勝ちゲームを見ていると、「後半戦に浮上してくるのではないか?」と思えるところがある。たとえば、岸田護に繋ぐ継投パターンが確立されたこと。岸田は昨季途中、チーム事情でクローザーに配置換えされた。今季は「クローザー」としての地位を固められるか否かが岸田自身の課題であったはずだが、平野佳寿、西川雅人などを挟み、「最後は岸田」という継投策を当たり前のように続けていた。岸田が肩を作り始めると、試合終盤の緊張感のようなものや、「今日は勝つ」という空気が伝わってくる。また、目下ブレイク中の西勇輝は、昨年秋のキャンプ時点から「強化指定選手」に挙げられていたので、岡田監督にすれば、「順調に育ってくれた」「想定範囲内」というところだろう。
チームの不振、成長過程にあるT-岡田のブレーキは覚悟していたとしても、中継ぎエース候補・古川秀一は誰もが予想できなかった。二軍では9試合に投げ、すでに17奪三振を決めたが(16日時点)、防御率は4点台。一軍昇格にはまだ時間がかかりそうだ。岸田がクローザーとしての地位を固めつつあるだけに、古川がいないのは痛い。
朴賛浩に往年の力はないとはいえ、休日返上で練習を重ねる姿に、オリックスナインも尊敬の眼差しを向けている。投打ともに1枚も2枚も足らないが、昨季は4番打者のT-岡田が育ち、今季はエース候補・西が頭角を現した。岸田もクローザーとしての信頼を固めつつある。岡田監督は負けながらもチームの勝ちパターンを構築しつつある。金子が帰ってくれば…。後半戦は巻き返してくるかもしれない。(スポーツライター・飯山満)