中国は、このISSの参加を打診したことがあるとは発言しているものの、実現はしていないといい、やはり、あくまで単独での宇宙開発を目指したい姿勢が垣間見える。
「ISSは2024年まで運用するが、それ以降は未定です。そのため、中国の宇宙ステーションが'22年に予定通り完成すれば、'24年以降は計画通り“世界で唯一”の立場を勝ち取れる。これに加えて中国は昨年、南シナ海の海南島に新たに建設した文昌衛星発射場から、新型ロケットの『長征7号』を打ち上げている。このロケットの歩みはいばらの道だったとされ、失敗を繰り返す中、1996年には宇宙開発史上最悪とされる大事故を起こした。しかし、それでもめげずに国費を投入して数多くの人工衛星や有人宇宙船を打ち上げ続けてきたのです」(前出・サイエンスライター)
『長征7号』は順調に飛行し、搭載していた新型有人宇宙船の試験機など、合計6機の人工衛星を軌道投入。試験機はその翌日にゴビ砂漠へ着陸し、成功を収めたという。
「つまり中国は『長征7号』の発射において、南シナ海の新しい発射場、新型ロケットと宇宙船の開発と、三つの課題をクリアしたということになる」(同)
その状況に科学技術関連記者はこう語る。
「中国の宇宙開発については、軍事転用されると不安視する見方も根強い。ロケットや宇宙船の誘導技術は弾道ミサイルなどの開発にも生かせるのです。中国には、こうした先端技術を自国の安全保障面でも利用しようとの狙いもある上、通信衛星などは世界の経済活動を妨害し、マーケットを大混乱に陥れようとするものだという見方もある。今後もトランプ大統領の強硬な姿勢が続くようであれば、中国側から何らかの攻撃を仕掛ける可能性はあるでしょう」
いまやGPS(全地球測位システム)など宇宙空間を利用した技術は欠かせなくなり、ますます依存度は高くなるばかりだ。中国には宇宙空間の開発でトップを走ることにより、軍事、経済の両面でも世界を制圧する狙いもある。
「それだけではありません。中国は北極や南極、深海、サイバー空間といった“未知の空間”の研究開発にもかなり力を注いでいると言われます。これらは『グローバル・コモンズ(国際公共財)』と呼ばれる手つかずの領域ですが、そうした分野でのデータ蓄積も、やはり近い将来での軍事、経済面で他国を圧倒するための戦略の一つです」(サイエンス誌編集者)