ジャパンCを目指すジャガーメイル陣営の合言葉は「最高で1着。最低でも1着」。重賞初Vへ、ここは負けられない一戦となった。
1番人気に支持された秋初戦の京都大賞典は、オウケンブルースリの差し脚に屈し4着。重賞奪取はまたも失敗に終わった。
「後ろから差される馬じゃないんですけどね。追い出してからの反応が鈍かったし、休み明けと右回りが響いたとしか思えません」と石橋脩騎手は振り返った。自身も初重賞制覇のチャンスを逃しただけに、ショックは大きかった。
「だけど、あれがこの馬の実力ではないですから」。リベンジを誓っていた矢先、今回はスミヨン騎手への乗りかわりが決まった。ジャガーメイルもすでに5歳の秋。重賞を獲るチャンスはそうたくさんあるわけではない。勝つために陣営は、非情な決断を下した。
だが、こういうことは勝負の世界では日常茶飯事。石橋脩はくさらず、悔しさを胸の奥に閉じ込めて、調教役に徹している。
10月29日の1週前追い切りは、美浦ポリトラックで6F81秒2→65秒5→51秒8→37秒7→12秒3の好タイムを楽々と叩き出したように、良化の跡は歴然だ。5Fで2秒も後ろから追いかけたスカーレットライン(古馬500万)を1/2馬身突き放し、貫録の違いを見せつけた。
「休み明けを1度使って息遣いが良くなっているし、確実に上積みが見込めます」と石橋脩はうなずいた。
AR共和国杯は、昨年、初の重賞挑戦となったレース。結果は惜しくも2着に終わったが、この直後にジャパンCを勝ったスクリーンヒーローとは0秒2差。東京の2500メートルは今春の目黒記念でも2着しており、ベストの条件といっていい。
さらに香港ヴァーズでも3着と国際級の能力を発揮。あと一歩、勝ち運には恵まれないが、GI級の底力があるのは間違いない。
「東京の二五はぴったりでしょう。前走は勝負どころでスッと反応できなかったけど、1度実戦を経験した今回は大丈夫だと思います」
悔しさをこらえて仕上げに徹した石橋脩。その思いは馬にも伝わっているはずだ。