ソニーの光ディスクドライブ事業は、年間数百億円の売り上げがあり、10%〜15%の世界シェアを握っている。ソニーの撤退で、当然そのシェアは中国などの海外勢に握られることになる。
ソニーは7月にカーナビ事業からの撤退も発表している。相次ぐ撤退の背景は財務状況の悪化だ。ソニーは2012年3月期連結決算で4566億円の純損失を出して、世界で従業員を1万人削減するリストラを進めている。今回の光ディスクドライブ事業の撤退で、このリストラに目途が立ったとみられる。
家電業界の苦境は、ソニーだけではない。2012年3月期連結決算で3760億円の純損失を出したシャープの経営は、さらに深刻だ。昨年度決算で、19%も売り上げを落としたシャープは、液晶製品、携帯電話端末、そして太陽電池という主力3事業が軒並み赤字転落し、資金繰りにさえ窮する事態に追い込まれている。2008年に2150円の高値をつけた株価は、200円を割り込んだ。すでに資金繰りに窮し、シャープの命運をメーンバンクが握っていると言っても過言ではない状況にある。
液晶テレビのアクオス、プラスイオンとマイナスイオンを同時に放出することで空気清浄を行うプラズマクラスター、過熱水蒸気で調理するヘルシオなど、シャープは画期的な独自製品を次々に発表することで成長を遂げてきた。
そのシャープが、いま台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業からの9.9%の出資を受け入れざるを得ないところまで追い込まれている。その原因は、明らかに長引く円高だ。
リーマンショック直前に1ドル=110円だった対米為替レートは、昨年初めに80円になり、その後1年半以上、「超円高水準」が続いている。
瞬間的な円高は、さほど怖いものではない。輸出産業が蓄えた資力を食いつぶしながら耐えることができるからだ。ただ、円高が長引けば様相は一変する。事業の継続が不可能になり、市場が海外に次々に奪われていくのだ。家電産業の相次ぐリストラブームは、いままさにその事態が始まったと証拠だ。
根本的な解決策は、円高の是正しかない。そして、その手段は、日銀が思い切った資金供給拡大策を採ることだ。
政府は、領土問題には、熱心に取り組んでいるが、なぜか輸出産業の防衛には、熱心でない。日本経済は原油や原材料を海外から輸入し、電機機械や輸送機械を輸出することで成り立っている。機械産業が転落していけば、日本経済そのものが立ち行かなくなるのだ。
次期解散総選挙では、この円高をどうするのかを争点にすべきだろう。特に来年4月に日銀の白川方明総裁が任期を迎える。その後任が、ある意味で日本の命運を握っているとも言える。
領土問題やエネルギー政策だけではなく、日本の輸出産業防衛にどのような姿勢で臨むのか。各政党の政策を国民はきちんと見極める必要があるだろう。