そんな神秘の遺跡・ストーンヘンジに酷似した遺跡が日本にも存在した。温泉で知られる岐阜県下呂市の金山巨石群、岩屋岩蔭遺跡である。
金山巨石群は岩屋ダムの下方、奥深い山の中の狭い地域に、岩屋岩蔭遺跡を始めとした3つの巨石による遺跡が密集して存在している。
岩屋岩蔭巨石群は10メートルはあろうかという3つの巨岩を組み合わせ、なおかつかぶさるように存在する大岩の下方が斜めに大きく割られており、南の方角に向けて洞窟状の空間を人為的に作成していることが判る。
また、岩屋岩蔭遺跡に古代の人間が記号として刻んだものであろう、線刻のある巨岩を含む約7メートルの巨石群と、約8メートルの岩が集まっている東の山巨石群が存在する。
いずれの巨石群でも、夏至や冬至の頃には太陽の光が独特の差し込み方をすることが判明していること、またここから縄文時代の遺物も多数発見されていることなどから、古代人たちが太陽の運行を調べ、暦を知るために作られた「天文台」のような遺跡ではないかと考えられている。
金山巨石群のうち岩屋岩蔭遺跡のすぐ下には、現在でも小さな祠が立っている。この金山巨石群の元には古くから岩屋神社、明治時代より前は妙見神社と呼ばれていた神社が存在していた。「妙見」とは北斗七星を神格化した天や天体に関する妙見信仰の事をあらわす。古来より脈々と続いてきた太陽信仰が姿を変え、金山巨石群を聖地とする信仰が根付いていったのかもしれない。なお、岩屋神社は現在は近隣の祖師野八幡宮に合祀されている。
なお、金山巨石群では現地の調査資料室によるガイドツアーが行われていたり、岩屋岩蔭遺跡の所にある太陽カレンダーシミュレータ再現館で、太陽カレンダーの見方を学んだりすることもできる。
秋晴れの日は、日本のストーンヘンジ金山巨石群にて、古代からの天文ロマンに浸ってみてはいかがだろうか。
文:和田大輔 取材:山口敏太郎事務所