ひな人形の市場規模がここ3年で5%ずつ落ちており、こうしたことを背景に「人形は女の子1人に、ひと飾りずつ持つべき」というのは、販促のためでは? といううがった見方もある。しかし、「核家族化で文化が継承されず、人形が『モノ』化してしまっている。本来の意義を理解した上で、どうするかを考えていただきたい」(同協会)とPRの狙いを説明する。もし三姉妹なら三飾りが必要となるが、一般家庭では負担は大きい。それよりなぜおさがりはNGなのか。
まず起源の1つが「流しひな」だったからという説だ。これは、身の穢れを紙でできた人形(ひとがた)に託して水に流し、厄を祓うという平安時代からの習慣から来ている。ひな人形は災いの身代わりとなっているので、長女のおさがりを次女に継承させたり、娘の子に伝承させるのはNGというわけだ。
「もう1つ起源として、ひな人形の原型は、平安時代の貴族階級の女の子が、ままごととして遊んだ『ひいな遊び』から来ているという説があります。貴族の遊びですから江戸時代に入ると、贅沢だということになり、ある程度簡素な物が作られ、現在のひな人形の形になったのです。旧家では嫁ぐ際には婚家へ持って行きますから、旧家ではひな人形がいくつも座敷にあったりしますが、あれはその家の娘の物ではなく、母、祖母、大祖母とその家の先祖代々の女性たちの嫁入り道具のひな人形が飾られているわけです」(日本文化評論家)
つまり、おひな様の原型である「流しひな」と「ひいな遊び」の2つの起源から考えると、母から娘に、長女から次女におひな様を譲るのは「本来は」避けるべきものだということになる。それでも何とか伝承する理由をこじつけられないか。
「三人姉妹ならそれぞれにひな人形が必要というのが基本ですが、もし飾る場所や費用の点で難しいなら次女には市松人形、三女には木目込み人形などという形をお勧めします。何も知らないままにお下がりを使っていて、娘の嫁ぎ先のご両親や友人にいろいろ言われて悲しい思いや腹立たしい気持ちになるのは嫌ですから、そこは本来の意味をきちんと理解した上で、『自分たち家族にあったスタイルを選んだのです』と説明できればいいのではないでしょうか」(同・評論家)
おひな様をリユースするのも今の時代だといえる。