「ジェンマ」とはイタリア語で「宝石」を意味する。試作車ながら反響は大きく、来年中には市販される見込み。
スズキ商品企画部の詫摩健さん(41=写真)は「前から後ろまで車体を徹底的に低くし、フロントラインも寝かせました。ここまでシートを低く抑えたマシンはない。ほら、タンデムライダーの足がべたっと地面につくんですよ」と後部座席にまたがってみせる。
車体を低くすることで取り回しが楽になった。安定感も増した。ほとんど段差のない「フルフラット2シーター」は世界初の試みであり、随所に工夫を凝らしている。
通常はシート下にあるヘルメット収納スペースを前方に移動。そのぶんシート高を下げた。タイヤの真上のテールエンドには切り込みを入れ、振動で上下するリアタイヤを邪魔しないようにしている。とかく後ろがボコッと膨らみがちなフォームは、低い水平線のように一直線になった。
全長は2350mmと超ロングサイズ。全幅760mm、全高1050mmと横幅に比較して車高がすこぶる低く、犬で言えばダックスフントのようである。ところがフロントカウルが後ろに反り返っているため、鈍くささはなくむしろ俊敏なイメージ。これぞ大人の2人乗りスクーターだという。
詫摩さんは「都市で最も合理的な移動手段はスクーターです。渋滞を回避できるうえ、電車と違って自宅から目的地までドア・トゥ・ドアで時間が読める。ジェンマはせかせか走らず、それでいて乗り回しやすい。男女が格好よく移動するにはぴったりなんです」と解説する。
車高の低さによって、1人で乗り込むときの身のこなしも優雅になるという。「とにかくまずまたがっちゃって、ゆっくり股下のスペースからヘルメットを取り出してください。走り出す前に立ったり座ったりちょこまかするのは格好悪い。どしんとまたがったままグローブをはめ、優雅にスロットルを開けましょう。乗る人へのライフスタイル提案はデザイナーのこだわったところなんです」と詫摩さん。
なるほど、たしかにモテおやじになれそうだ。