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創業100年のニコンも大赤字 スマートフォンに押されるカメラメーカーの崖っぷち

 世界をリードしてきた日本のカメラメーカーがここ数年、スマートフォンなどの携帯カメラに押されて苦しんでいたが、いよいよ崖っぷちだという。精密機器大手の'16年4月〜12月期連結決算が出揃う中、デジタルカメラ事業でキヤノンとトップ争いをしてきたニコンが、最終赤字となったのだ。
 カメラ業界に詳しい経営アナリストは、ニコンのIR(投資家向け財務、業績動向)を見てこう分析する。
 「カメラ界の雄、ニコンはここ数年のスマホカメラの台頭によるカメラ不況をもろに受け、ジワジワと売り上げを下げ続けてきました。'13年にはカメラ以外の事業を含めての総売り上げ高が1兆円を超えていましたが、'16年4〜12月決算では5658億9300万円で、前年同期比8.2%減、最終損益8億3100万円の赤字となったのです」

 ニコンはカメラ事業が売り上げの5割〜7割を占める。その大黒柱の不振は数値を見ても明らかで、'13年3月期7512億円の売り上げが'16年3月期には5204億円に落ち込んだ。
 「ニコンの失速の原因は、価格も性能も低いものからハイエンドクラスまで揃えた、コンパクトデジタルカメラからの撤退が遅れたという見方もある。その間、カシオや富士フイルムは、いち早くローエンド商品から撤退し、傷口を最小限に留めたのです」(業界関係者)

 ニコンをしのぐカメラのトップランナー、キヤノンも、カメラ不況の荒波を受けている。
 同社の売り上げのうち、カメラを含む事業を展開するイメージングシステムズの決算内容を見ると、コンパクトデジカメの売り上げ額は、'16年4〜12月決算で対前年比でマイナス38%、デジタルカメラはマイナス20%だ。
 「この傾向は、国内でデジタルカメラを扱うオリンパス、ソニー、パナソニックなども、大小の差はあれ、全体として不振の壁にぶち当たっています」(同)
 各カメラメーカーが会員の一般社団法人カメラ映像機器工業会(CIPA)の統計でも、国内メーカーの総出荷台数は、カメラ業界がピーク時の'10年に1億2146万台、金額にして1兆6432億5000万円だったのが、'16年には2419万台、金額も7102億円と激減。

 こうした流れは、小売業界でも顕著に表れている。
 カメラ販売の『カメラのキタムラ』など1300店余を全国展開するキタムラは、'17年2月14日、'18年3月までに129店を閉鎖すると発表した。
 「写真プリントなどの不振などと言われるが、やはりカメラ業界全体の不振が大なり小なり影響した動きと見てよいのでは。閉鎖は今後、さらに拡大することも予想されます」(前出・業界関係者)

 もはや業界の不振の流れに歯止めがかからないと見たのか、日本の各主要カメラメーカーは別分野に比重をシフトする動きが活発だ。
 先の経営アナリストが言う。
 「ニコンはカメラ事業の縮小、さらに財務強化のため、昨秋から希望退職を募り1143人の希望者が出た。主力のカメラ事業は継続、工場の閉鎖もゼロだが、今後は医療業務にも投資してカメラ偏重から変えていく構えです」

 キヤノンはカメラ販売を従来規模の年間1000万台前後は維持しつつも、将来ジリ貧を考慮し、同じカメラでも防犯カメラなどの事業を活発化させる動きだ。
 「キヤノンは'15年には監視カメラでトップのスウェーデンのアクシス社を3307億円で買収し、世界トップの監視カメラ企業に躍り出た。昨年には、あの東芝の虎の子の一つ、東芝メディカルシステムズを6600億円で買収して話題を呼んだ。医療機器分野にも重きを置いています」(業界関係者)
 '16年のキヤノンの分野別での売り上げ高を見ると、カメラなどを含むイメージングシステム分野は1兆950億円の売り上げで、'17年もほぼ横ばいを堅持。一方で医療分野を含む産業機器では、'16年5850億円から'17年は一気に1兆超えの大幅増を目指す。

 ただし、視界不良のカメラ業界にあって希望を抱かせる話もある。
 「マーケティングリサーチ会社のGfkの調査でも、東南アジアでのミラーレスカメラの売り上げが大きく成長しているのです。ミラーレスとは、カメラボディー内のミラー不使用で一眼レフより軽量小型化でき、しかも画像は鮮明、値段も5万円前後からと手ごろ。そのため、スマホでは物足りないというユーザーの人気を集めているのです」(同)

 キヤノンをはじめパナソニックやソニー、内視鏡で世界の医療界で大きなシェアを占めるオリンパスなども、この分野では新商品開発に意欲満々。逆風の中、制するのはどこか。

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