「セクハラや金銭問題のように、国民がヒートアップする派手な案件ではないため、報道もいまいち盛り上がりませんが、国家の歴史そのものと言っても過言ではない統計をごまかしていたというのは大問題です」(厚労省担当記者)
今回の問題は、厚生労働省の「毎月勤労統計」で、500人以上の規模の全事業所を調査すべきところ、2004年以降、東京都の対象事業所の3分の1程度の抽出調査でごまかしていたというもの。このため、雇用保険の支払い不足などで800億円の被害が生じていることが発覚した。
厚労省は、昨年も「裁量労働制で働く人のほうが、一般労働者よりも労働時間が短い」とする誤った資料の作成などが問題化。政府内では“厚労省解体論”も出始めているという。
「昨年、自民党行革本部で中央省庁再編を検証し始めたが、動きは緩慢だった。今回の問題を機に、一気に進展するともっぱらです」(自民党関係者)
現省庁体制は、'96年の橋本龍太郎内閣で始まり、森喜朗内閣時代の'01年に実行された。各組織のスリム化も狙いの一つだったが、厚生省と労働省の連携が不可欠として誕生した厚労省は、一般会計の4割を占める予算30兆円規模の巨大省庁となった。
「今回の問題で“解体論”が出るのは当然だが、自民党内や霞が関では、『役割的に一体が自然。いまさら分割しても逆に非効率になるばかりで時代に逆行する』という声のほうが圧倒的に多い」(霞が関関係者)
安倍政権は、JOC竹田恆和会長の五輪贈賄疑惑や、ロシアとの北方領土問題の空回り、米中貿易摩擦の日本経済への悪影響など八方ふさがり。そこで、厚労省を“生贄”にして他の批判からも逃げ切ろうというわけだ。
もりかけ問題から逃げ切った安倍首相にしてみれば、まさに「他人事」なのだろう。