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熱き侍たちが躍動!! メジャーリーグ Times メジャーリーグ 球団経営の基礎知識

 イチローと田澤純一が所属するマーリンズのオーナーが売却の意思を示したところ、複数の投資家グループが買収に名乗りを上げ、現在熾烈な売却合戦が繰り広げられている。そこで今回は、メジャーリーグの球団経営をカネと数字の面から解剖、4つのQ&Aという形にまとめてみた。

 Q1:球団はいくらで買えるか?
 A:実勢価格は1400〜5700億円。

 球団が売りに出される場合、基準になるのは経済誌『フォーブス』が毎年発表する評価額だ。
 今シーズンの開幕時に発表されたリストで評価額が高いのは大都市の強豪球団で、1位ヤンキース=37億ドル(4070億円)、2位ドジャース=27.5億ドル(3025億円)、3位レッドソックス=27億ドル(2970億円)、4位カブス=2650万ドル(2943億円)の順だった。逆に評価額が低いのは地方都市を本拠とする成績が振るわない球団で、28位レッズ=9.15億ドル(1001億円)、29位アスレチックス=8.8億ドル(968億円)、30位レイズ=8.25億ドル(908億円)となっていた。マーリンズは25位で評価額が9.4億ドル(1034億円)だった。
 球団が売りに出される場合、この評価額の1.3〜1.5倍で売却されることが多い。平均値を1.4倍とすると、評価額4070億円のヤンキースの実勢価格は5698億円。評価額が最低であるレイズの実勢価格は1400億円になる。
 現在進行中のマーリンズの買収合戦では、前フロリダ州知事ジェブ・ブッシュ(ブッシュ元大統領の弟)と、元ヤンキースの看板選手デレク・ジーターをリーダーとする投資家グループが買収額として13億ドル(1430億円)を提示している。'11年にDeNAがベイスターズを買収した時の金額が65億円だったので、マーリンズのような弱体球団でも手に入れるには22倍のカネが必要になる。

 Q2:弱体球団が主力選手に超高額年俸を支払えるのはなぜ?
 A:莫大なテレビ放映権料があるから。

 メジャーリーグでは、不人気で成績も振るわないチームでも、主力選手に15億円以上の年俸を支払っているケースがたくさんある。その代表例が、マーリンズが主砲のジャンカルロ・スタントンと交わしている13年358億円の契約だ(年平均30億円)。観客動員も成績も冴えないマーリンズが、このようなウルトラ高額契約を主力選手と交わせるのは、テレビ放映権料のおかげだ。
 MLBの放映権料はコミッショナーが管轄する全国放映権と各球団が管轄するローカル放映権の2本立てになっている。MLBに入る年間の全国放映権料は1650億円。これを30球団に均等に分配するので、マーリンズはこれによる収入が55億円ある。それ以外に、球団に直接入るローカル放映権料収入が20億円。この2つの放映権料を合わせると75億円があるので、成績が振るわない地方球団でも主力選手に超高額年俸を支払うことができるのだ。

 Q3:各球団のオーナーの本業は何?
 A:プロの球団経営者。

 日本では、大物経営者や大企業が片手間で球団を経営している。オーナー会議に出席している連中はすべてスポーツビジネスに関しては素人である。それに対し、MLBのオーナーは皆、他業種で財を成したあと、その多くを球団の買収につぎ込んで、球団経営をメーンにするようになった人物たちだ。
 NHKが以前、NHK特集でレッドソックスのオーナーであるジョン・ヘンリーをヘッジファンド業界の大立者と紹介したため、日本の大リーグファンは今でも、彼を新種の金融ビジネスのカリスマ経営者だと勘違いしている人が多い。しかしヘンリーは、人聞きの悪いヘッジファンドビジネスなど、とっくに廃業しており、プロのスポーツ経営者に変身している。レッドソックスが最強チームになったおかげで、500億円で買収した球団は15年で資産評価額が5倍になり、英国プレミアリーグの名門リバプールFCも買収してオーナーに納まっている。
 球団経営は確実に儲かる上、オーナーになると地域社会の名士にもなれるので、大統領にだって会うことができる。だから莫大な投資をしてでも、オーナーになりたい資産家が後を絶たないのだ。

 Q4:ファン層はどんな人たちか?
 A:中高年の白人、ヒスパニック系。

 米国の人種構成は白人74%、ヒスパニック系14.8%、黒人13.5%、アジア系4.4%、先住民系0.8%である。このうち野球ファンの中核をなすのは、白人の中高年層(特にホワイトカラー)とヒスパニック系(とくにメキシコ系)である。
 黒人はバスケ志向が強く野球には見向きもしない者が多い。そのため30年前、メジャーリーグで全選手の2割近くを占めていたアメリカ黒人の選手は現在5%に減少。黒人選手の多くはヒスパニック系になってしまっている。

スポーツジャーナリスト・友成那智(ともなり・なち)
今はなきPLAYBOY日本版のスポーツ担当として、日本で活躍する元大リーガーらと交流。アメリカ野球に造詣が深く、現在は大リーグ関連の記事を各媒体に寄稿。日本人大リーガーにも愛読者が多い「メジャーリーグ選手名鑑2017」(廣済堂出版)が発売中。

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