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森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 森友学園問題のもたらすもの

 森友学園が設立しようとした小学校に国有地がタダ同然で払い下げられた事件は、国会での疑惑追及が続いている。しかし、物証が乏しいこともあって、真相は闇の中に葬られる可能性が高いだろう。問題となるのは、この事件が、どのような影響をもたらすのかという点だ。

 今回の事件の主役は、誰がどう考えても財務省近畿財務局だ。ここが、タダ当然の払下げになるように過大なごみ処理費用を見積もらせ、さらに、通常では絶対にありえない分割払いまで認めて、森友学園の土地取得に際し全面協力した事実は、まったくもっておかしな話だ。
 ところが財務省は、適正な手続きを踏んで、適切な価格で売却したと、一貫して主張している。さらに、森友学園と近畿財務局が交渉した経緯の資料をすべて廃棄し、森友学園の籠池理事長が近畿財務局に入館した記録さえ、すべて廃棄したとして、真相の究明を阻んでいるのだ。

 一方の安倍総理は、国有地払い下げに自分や妻が関与していたら、総理はおろか、国会議員も辞職すると宣言している。
 この状況は、「財務省が安倍総理の生殺与奪の権利を握っている」ということを意味する。小役人の1人でも、安倍総理の名前を出せば、総理が辞任に追い込まれるからだ。

 実は、財務省は再来年の10月から消費税率を10%に上げる予定にしており、法律上もそうなっている。ところが、安倍総理は、昨年あたりから、それを打ち砕こうとしてきた。状況証拠は複数ある。
 まず、今年1月の『文藝春秋』で、安倍総理の経済参謀を務める浜田宏一内閣官房参与が「アベノミクス私は考え直した」という論文を発表した。そのなかで浜田氏は、アベノミクスでデフレを脱却するためには、「減税を含む財政出動」が必要だと表明したのだ。浜田氏は、もともと消費税増税に反対しており、参謀の浜田氏がそんな考えを示せば、安倍総理も同調して、消費税を引き下げると言い出しかねない。
 第2の証拠は、1月6日に安倍総理が首相官邸にイギリスのアデア・ターナー金融サービス機構元長官を招いて会談をしたことだ。ターナー氏は「ヘリコプターマネー」の提唱者で、デフレ脱却のためには、減税あるいは国民に現金をばらまいても構わないと主張している。
 そして、第3の証拠は、プリンストン大学のクリストファー・シムズ教授が2月に来日し、各地で行われた講演やシンポジウムが大盛況となったことだ。シンポジウムには浜田氏も参加した。
 シムズ教授は、自身の「物価水準の財政理論」に基づいて、「日本は物価目標を達成するまで、消費税増税を凍結すべきだ」と繰り返し主張している。

 こうした状況を、消費税増税を最優先課題に掲げる財務省は、苦々しく感じただろう。しかも安倍総理は、過去2回、消費税増税を先送りした前科二犯だ。何としても、総理を止めなくてはいけない。
 その意味で、森友学園問題は、財務省にとって追い風となる。しかも、安倍総理の窮地は、総理再登板を狙う麻生財務大臣にとっても好都合だ。やはり、森友学園問題の主犯は、財務省ではないのか。

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