『中小企業の皆さま、金融円滑化法の期限が切れる4月以降も、おーきな安心をお届けします!』
わざわざ“おーきな”と棒引きまでして強調したこの「円滑化法」とは、平たく言えば“企業が銀行から借りたお金を約束通り返さなくてよい法律”である。その法律が、3月末をもって終了したのだ。
金融庁や民間の信用調査会社帝国データバンク等の推計によれば、「円滑化法」を利用している企業は40万社程度存在するといわれている。日本に約420万社存在しているとされる企業の、およそ10社に1社が、この“平成の徳政令”にすがっていたわけだ。
冒頭の広告は、銀行がすぐに“手のひら返し”をしないように「ちゃんと金融庁が目を光らせていますよ」というアピールに他ならない。金融庁にとっても、企業倒産の増加は自身の政策失敗と捉えられかねず、ひいては安倍政権の命題でもある景気浮揚策にも影響が出るからだ。
しかし、このメディア戦術の裏で、実際には“手のひら返し”は既に始まっているという。
「返済を猶予することは不良債権の蓄積を意味し、銀行にとっては望ましいものではありません。金融庁からの指導はありますが、融資の現場では、返済条件の変更や借入金の元本部分の支払い猶予を繰り返すにも限度が出ます。借り手の中には、銀行側の勧めで中小企業再生支援協議会を頼ったものの効果がなく、毎年借りていた短期資金の融資すら銀行から断られる状態となり破産した会社もあります」(大手銀行幹部)
景気を下支えするはずの中小企業が死んでしまっては、経済再生どころではないはずだ。