文氏については、トンチンカンな反日論調を繰り返す朝鮮日報でさえ的確な批判をしている。《文氏は『当選すれば直ちに開城工業団地と金剛山観光を再開する』と明言している。これらは国連による制裁に違反するのはもちろん、金正恩委員長の息を吹き返させ、米国とも深刻かつ無用な対立を引き起こすだろう》とまで言い切るのだ。
北朝鮮と同様、文氏が在韓米軍の撤退を主要目標に掲げていることは周知の事実で、リベラル派のニューヨークタイムズでさえ、この幼稚な安全保障認識しか持たない次期大統領最有力候補を危険視し始めている。
「オバマ前政権の対北政策である『戦略的忍耐』の結果はどうだったか。明らかに北朝鮮の作戦勝ちです。朝鮮日報も『オバマの対北政策は戦略的忍耐ではなく“意図的責任回避”だ』と酷評したことさえあった。オバマが手をこまねいている間に、北は過去5回の核実験を実施し、弾道ミサイル開発も米本土まで届くところまで来てしまった。移動式の連続発射技術も備え、第2撃を可能にする潜水艦発射弾道ミサイルの発射実験まで行ったといった具合に、着実に核能力を拡大しているのです。米ジョンズ・ホプキンズ大の北朝鮮分析サイト『38ノース』によれば、北朝鮮北東部・豊渓里の核実験場の坑道入口で動きがあるとし、6回目の核実験に向けた準備ではないかと指摘しています。核の小型化にまい進している今、日米韓は金正恩の斬首作戦を実行しないと取り返しのつかないことになるのです」(軍事アナリスト)
日本は今、豊洲移転問題や森友学園騒動でやかましいが、すでに北のミサイルが日本の防衛能力では迎撃できないレベルに達しているということに、もっと関心を持つべきだろう。北朝鮮は3月6日、弾道ミサイル4発を秋田と能登半島沖に同時発射。これに対し、日本が船舶に対する注意報を出したのは発射の13分後だ。北ミサイルの飛翔時間は10分以下だから、もしこれが東京だったら警報前に弾着している。
「菅義偉官房長官は『事前通告なしに発射されたから、どこに飛ぶか察知は困難』と弁明しましたが、実戦で北が発射を事前通告してくれることなどあり得ません。日本のミサイル防衛費はすでに1兆8000億円に達していますが、そのカネは地震予知と同様、誰かの胃袋に収まり、屁と糞になって消えています。悔しいですが、韓国の保守派に“打倒文在寅”を果たしてもらう以外に日本が核の脅威から逃れるすべはありません」(軍事ジャーナリスト)
現在、韓国にとって重要な戦略パートナーの日米両国の外交代表はソウルに駐在していない。米国大使の不在はトランプ政権誕生直後であり、まだ新任大使が決定されていないこともあるが、釜山の慰安婦像設置問題に抗議して帰国した長嶺安政日本大使はいまだ帰任していない。日米大使の同時不在という状況は、現在の韓国の“孤独死”を予見するに十分だ。
「韓国の保守派は、朝鮮半島の『赤化(共産主義)統一』を恐れており、左派政権発足を見越して“倒閣運動”の声を上げています。要するに弾劾決定は憲法違反だとして、『国民抵抗権』を発動するとの意思表明です。この権利は、政府が体制を揺るがすような政策を取った場合に、国民が街頭に出て政権を倒すことは憲法上許されるというもので、左右両派の大規模デモもそうですし、過去には李承晩政権を民衆が倒した『4・19革命』(1960年)を再現することなのです。右派は間違いなく逆襲に転じるでしょう」(大手紙元ソウル特派員)
恐らく、選出された韓国の新大統領には訪問要請の招待状は一通も届かず、外国の国家元首は誰も訪韓しないだろうと、この元特派員は指摘する。そうならないと韓国国民は夢から覚めない。
「北朝鮮の国連大使は、金正男氏暗殺のVXガスは韓国から搬入したものだと主張していますし、暗殺事件の黒幕は米国だと言い放ちファイティングポーズを取っている。一方、先頃、北京入りした米ティラーソン国務長官は、王毅外相に『米国の要求に従わない場合は、米国に進出している中国の銀行に制裁を課すことも検討中である』と伝えました。これに対して、中国は王外相に、『アジア情勢の悪化は米国の韓国へのTHAAD(高高度ミサイル防衛システム)配備が原因であり、米韓軍事演習は直ちに止めるべきだ』と国連の安保理決議を無視したたわごとを繰り返し言わせ、その舌の根も乾かないうちに在韓米軍を監視するレーダーを追加配備して、朝鮮半島と日本全域を監視下に置きました。このシステムは一部の分析でTHAADレーダーの3〜4倍も強力なものだとされ、最新鋭のF35Bステルス戦闘機の動向さえ把握できるといわれます。中国は、韓国に自国に最も都合のいい大統領が誕生するとタカをくくっており、政権空白の現在の韓国には一連の中国の圧力をはねのける力はありません」(同)
中国属国時代が復活する韓国と北朝鮮のタッグ――。日本にとっては悪夢の核武装国家“高麗連邦”の出現が目前に迫っているのだ。