アイドル刺傷事件から考察「握手会は必要なのか?」

アイドル 2016年06月05日 12時00分

アイドル刺傷事件から考察「握手会は必要なのか?」

 5月21日、音楽活動をしていた大学生、冨田真由さんがファンの男に刺される事件が発生してから2週間が経った。ネット上には、今も彼女の容体を心配するアイドルファンたちの声が絶えない。すべてのアイドル、すべてのアイドルファンにとって、決して他人事ではないからだ。

 立場や役割上、各種メディアでは、すでに風化の色さえ見せはじめている。しかし、アイドルに関わるすべての者は、この事件を見つめ続ける義務がある。アイドルとファンの関係、アイドルビジネスの在り方。それらに、的確な答えを見つけることはできるだろうか?

 冨田真由さん刺傷事件のあらましは、すでに多くのメディアによって報じられている。改めて詳細を並べる必要はないだろう。こうした事件が起きるたび、必ず湧き上がるのが、事件を「アイドルビジネス」や「オタク」という枠のなかに嵌め込んで語るメディア側の論理と、自分たちに向けられた視線を跳ね返そうとするオタク側の論理の対立だ。

 「オタクや握手会が危険なのではなく、事件を起こした男が危険なだけだ」

 アイドルファンが挙げる反論には一理ある。犯人がオタクだったから、オタク全体まで危険視されたのではたまったものではない。一部の常軌を逸した者によって、アイドルが傷付けられる事件は、過去にもたびたび発生している。古くは美空ひばり、岡田奈々、松田聖子らが、命の危険性すらあった暴行を受けている。また、今回の被害者の冨田真由さんは、かつてアイドル活動をしていただけで、現在の肩書きは「シンガーソングライター」に近い。そこから、「今はアイドルではないのだから、アイドルやアイドルオタクを標的にするのは間違っている」という意見も、しばしば見聞きする。

 確かに、いずれも一理ある。しかし、だからといって「アイドルとアイドルファンには関係がない」と一蹴するわけにはいかない。

 美空ひばりが狂信的な女性ファンから塩酸をかけられ、松田聖子がステージに駆け上がった男性から鉄製の工具で殴打された頃と現在とでは、アイドルを取り巻く環境が大きく異なる。握手会などの各種イベントによって、アイドルとファンとの物理的な距離は、非常に近いものになっている。

 要は「機会」の問題だ。銃のない社会では、「銃で人を傷つける」という発想がそもそも生まれないのと同じように、機会が多く与えられれば、それだけアクシデントが発生する可能性は高くなる。また、「今はアイドルを名乗ってはいないのだから、アイドル全体を問題視するな」という指摘も、いささか的外れなものだ。冨田さんの現在の肩書き云々ではなく、その活動の一部がアイドル的であったこと、またアイドル時代から冨田さんを応援するファンが事実上いることなどから、メディアでは「アイドル」や「アイドルビジネス」を論じようとしているに過ぎない。

 アイドルファンが、自分たちの住む世界とアイドルそのものを守りたいという気持ちは重々理解できる。しかし、今後、冨田さんと同じような被害に遭う可能性を最も持っているのがアイドルであるならば、それはアイドルの問題として受け止めるべきだろう。その世界を守りたいのであれば、なおのことだ。

 現在のアイドル業界が、「握手」をせずにビジネスを成立させるのは、難しいのかもしれない。特に、大きな資金的支えを持たない非メジャーアイドルたちは、握手やチェキ撮影などによって、なんとか運営資金を賄っているのも事実だ。また、アイドルと至近距離で触れ合い、会話ができるのは、多くのファンにとっては大きな喜びだ。既存ファンへのサービス、新規ファンの獲得、CD売上の上乗せなど、さまざまな点において、“正しいビジネス手法”であるのは間違いない。

 ただ、そうした手法が王道であるなか、握手をせずにビジネスを成立させている例もゼロではない。そのひとつが、ももいろクローバーZだ。ももクロも、結成当初やブレイク直後あたりまでは、たびたび握手会を催してきた。しかし、現在ではそれらの接触系イベントからは手を引いている。また、海外人気が著しいBABYMETALも、「握手をしないアイドル」のひとつだ。

 彼女たちの成功を見る限り、アイドルにとって握手は大きなメリットを生むが、「絶対条件」とまでは言えないようだ。

 「握手をしない方がスター性を感じられる」
 「ライブを観たときの感動が大きい」
 「メンバーを疲弊させないで済む」

 ももクロやベビメタのファンには、握手をしないことをデメリットではなく、メリットとしてとらえる声も多い。今回の事件のような危険を回避できるという点も、当然あるだろう。

 2年前、AKB48の握手会で傷害事件が起きた際、タレントの松本人志は「握手会以外の方法でもファンを魅了することはできる。握手会をやめろとは言わないまでも、別の道を模索してもいいのではないか」と提言し、アイドルファンの間でも議論を呼んだ。警備の強化、握手会の是非、アイドルビジネスの在り方。アイドル業界は、これらの課題や問いに明確な答えを見つけることができるだろうか。

 変化が求められているのは間違いない。その変化は、アイドルファンにとって喜びの減少に繋がるかもしれない。しかし、アイドルが安心して夢を追うことができるのなら、それこそアイドルファンの本望とも考えられる。ももクロやベビメタの成功も、ひとつの参考にはなるはずだ。

【リアルライブ・コラム連載「アイドル超理論」第30回】

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