記者会見した内山斉委員長は、「仮に14勝しても、優勝しなければ審判部も(昇進話を)挙げてこないでしょうし、挙げてきたところで我々も疑問符がつく」という見解を示した。過去、優勝争いの経験はあるが、一度も優勝したことがない稀勢の里にとって、これは非常に厳しい条件と言っていい。“優勝”の二文字にこだわる理由は何か−−。二つある、と協会関係者が明かす。
「一つ目は、一度も優勝せずに横綱になった双羽黒が不祥事を起こして引退して以降、昇進条件が格段に厳しくなった。平成以降に横綱になった8人はいずれも2場所連続優勝。最も新しい日馬富士などは2場所全勝優勝ですから、稀勢の里だけ例外というワケにはいかない。二つ目は、平成10年夏場所後の3代目若乃花以来の日本人横綱誕生ですから、堂々と胸を張って上がってほしい、という思いが関係者には強い。後で何だかんだとケチをつけられるのは嫌なんですよ。鏡山審判部長(元関脇多賀竜)も、全勝優勝してスカッとした形で上がってほしいと話しています」
この裏には、たとえ横綱になっても稀勢の里は不用意な取りこぼしが多く、苦労する、という共通の不安が隠されている。
果たして稀勢の里は、この過酷な条件をどうクリアしてみせるか。すでに場所前に稽古を休むのは正月の1日だけで、年の瀬も正月気分も返上して猛稽古に没頭することを宣言している。