「夫に内緒で始めたアクセサリーのネットショップが、思った以上にうまくいかなくて…。夫の仕事も不景気で大変ですから、借金が膨らんでいることも、今の生活費が足りないなんてことも言えません。風俗は未経験でしたが、今は割り切ってやるしかありません…」
子供はなく、旦那さんの帰宅はいつも深夜だとか。
「10時までには帰るようにしているので、この仕事をしていることはバレていません」彼女はそう言って足早に駅に向かった。
一方、サラ金(消費者金融)への借金返済に困り、ヤミ金に手を出してしまったというのが、3歳児の母親M代さん(36歳)だ。
「2年前のある日、突然、借りられなくなりました。それまでは、返済するとATMに借入可能額が表示されていたんですが、その日からゼロになったのです」
借金の原因は、M代さんの浪費癖。独身時代からの派手な生活は、結婚して子供ができてからも、なかなか直らなかった。ヤミ金で最初に借りた2万円は10日後に3万円になり、その後は利息の1万円さえ払うのがやっとの体で、雪ダルマ式に借金は増えたという。
「相手(ヤミ金)も最初は優しかったのですが、少しでも返済が遅れると、主人に言うぞと脅かされて…」
結局、彼女は弁護士に相談し、債務整理を行った。
改正貸金業法によって、年収の3分の1まで(複数の会社から借りている場合は合算して)しか借りられなくなった。なぜ、こんな規制が必要になったかといえば、日本では“道徳や体裁”が契約や法律より強い力をもっているからだ。
日本人は経済的に破綻しても、個人破産を極力避けようとする。身内が代わりに支払うケースから、放棄して逃げてしまうケースまでさまざまだが、自己破産者は多重債務者のごく一部に過ぎない。そのために貸し手は、本人の返済能力を超えて貸しても、資金回収ができてしまうのである。
自己破産者が一番多かったのは2003年で24万人。日本の労働人口は6500万人で、サラ金の利用者は1400万人弱だった。多重債務者が皆「返せないから自己破産する」という道を選んでいたら、業者は返済能力の範囲でしか貸さなくなっていただろう。