「しかも、同国は世界第2位の地熱発電国。住友商事が世界最大級の地熱発電所建設プロジェクトを進め、伊藤忠と九州電力、東芝と丸紅も地熱発電に参入している。日本との関係も良好で、バリ島を中心に年間23万人の日本人観光客が訪れ、いまだに増加傾向にあるのです」(経産省関係者)
だが、この国も一歩間違えればテロのターゲットになる環境が揃っているのだ。
「イスラム教国であるインドネシアでは、'02年にアルカイダと共闘する過激派組織『ジュマ・イスラミーヤ』(JI)がバリ島で爆弾テロを起こし、202人が死亡。同組織が何度もテロを起こしているのです。政府のテロ対策で現在その力は弱まっているが、これがいつ息を吹き返すかわからない。日本が目立った経済活動をしているだけに、テロが起きる可能性も指摘されているのです」(警察庁関係者)
では、遠く離れた中南米はどうか?
かつて日本人が大量に移民したブラジルには、現在トヨタやKDDI、NECなどをはじめ約350社前後の日本企業が進出している。'14年にW杯サッカー、'16年に夏季五輪が開催予定で、近年は日本からの投資も倍増しているのだ。
「過去に大きなテロも起きていないため、日本企業も安心と見ている。問題は2つの国際的なイベントが、狙われないかだけだ」
前出の外信部記者はこう語るが、問題はどうやら隣国のペルーのほうが大きいようなのだ。
「ペルーでは'96年に『日本大使館公邸占拠事件』が起き、武装する革命勢力『MRTA』に一時600人もが人質に取られた。同組織は弱体化したというが、残党はしぶとく生き残っている。この事実と駐在、移民を合わせ9万人以上の日本人が住み、23社に上る日本企業が進出していることを考えれば、油断は禁物と言わざるを得ないのです」(前出・シンクタンク関係者)
世界中で商売を進める我が国のサラリーマンがテロの脅威にさらされる−−そんな事態が、日増しに高まっていることは事実なのだ。