メジャーでは巨大補強を繰り返すヤンキースが毎年のようにぜいたく税をコミッショナー事務局に支払っている。そのお金は30球団で配分されるシステムになっており、その分配金で経営を成り立たせている弱小球団まであるという。
ヤクルトのエース・グライシンガー、4番・ラミレス、横浜の守護神・クルーンを獲得したときに、阪神・岡田監督(現オリックス監督)は、「巨人はそこまでして勝ちたいのか」と激怒したことがある。確かに巨人の物量作戦は、故障者続出の今季に、目に余る形で現れている。
「戦力の差を言っても今さらしようがない。それを言ったらおしまいだから」と、ある球団の監督は立場上、弁解無用を強調するが、怒り心頭の前出の関係者はさらに巨人の手口を明かすし、改善の必要性を訴える。
「たとえば、グライシンガーの年俸が2億5000万円と言われるが、冗談ではない。それだったら引き留めたヤクルトに残っているはず。その倍は出している。ただ年俸は2億5000万円にして、必ず達成できるインセンティブをいくつか作って2億5000万円になるようにする。たとえば、出場給1試合いくらとかね。これでは、メジャーのようなぜいたくセ税を作っても効果はなくなる。明らかになった年俸2億5000万円だけでは話にならないからね。総額をハッキリさせるようにしないと意味がない。そうすべきだろう」。
巨大戦力の巨人が当然のように、一人勝ちしても何のプラスもないだろう。「もうセ・リーグの灯は消えるのか」とセ・リーグ関係者は頭を抱える。5月のゴールデンウイークを終えた時期に、早々と2位、3位のクライマックスシリーズ(CS)出場権争いにしか興味がないとなったら、しらけるだけだろう。
「メジャーリーグのように、ぜいたく税導入」という提案には、現実的な説得力がある。巨人はもちろん「巨大補強の批判はお門違い。企業努力だ」と反論するだろうが、この大不況下の世の中では通用しないだろう。巨人人気で球界全体を潤せた古い良き時代は終わっているのだ。一時は消滅危機をささやかれたサッカーのJリーグが生き延びているのも、選手の大幅な年俸カットを断行したからだ。球界にも出血を伴う大改革が求められている。