埼玉西武ライオンズの親会社、西武ホールディングス(HD)と、筆頭株主である米投資会社サーベラスが、同社の株式再上場をめぐって暗闘を開始。その過程で「シーズン中にも球団が身売りされる公算大」というのである。
西武HDの発行済み株式の32.4%を保有するサーベラスは、同社株を追加取得すべく、3月12日から公開買い付け(TOB)を開始した。期間は4月23日までで、TOB価格は1株1400円。議決権ベースで36.44%取得を上限としている。実質4%強を買い増すことで重要事項に拒否権を行使し、経営への影響力を強めるのが狙いである。
「HDの前身である西武鉄道は、2004年12月に上場廃止されたとはいえ、沿線住民を含め当時からの株主は相当いる。もしも彼らがサーベラスの敵対的TOBに応じれば、西武は一気に外堀を埋められる。議決権の3分の1超をバックに6月の株主総会で息のかかった役員を送り込めば、実質的に経営権を奪取するに等しい」(市場関係者)
西武王国のドンとして君臨した堤義明コクド会長(当時)が、有価証券報告書の虚偽記載を明らかにした'04年10月13日、西武鉄道の株価は1081円だった。サーベラスのTOB価格は、それよりも高く設定されたことがミソである。市場関係者が続ける。
「西武HDが去年の10月、東証に上場を申請したとき、複数の幹事証券が試算した売り出し価格(IPO)は1100円前後で、潜在力を最大限に見積もっても1500円程度だった。この試算と比べてもTOB価格は決して安くない。再上場を待ちきれない個人投資家が群がったとしても不思議ではありません」
ところが、そのTOB価格とは裏腹に、サーベラスはIPO価格が不当に安く設定されていると主張。昨年から企業価値の向上を求めて西武経営陣とにらみ合いを演じてきた。問題は、サーベラスが提示した向上策だ。
ざっと挙げると西武山口線(西武遊園地駅〜西武球場前駅)、秩父線(吾野駅〜西武秩父駅)、多摩川線(武蔵境駅〜是政駅)など、低採算路線の廃止。『レッドアロー』など特急料金の引き上げ。プリンスホテルのサービス料値上げ。西武ライオンズの売却も含めた採算性向上の検討−−。
とりわけ「西武山口線の廃止」と「西武ライオンズの売却」は密接にリンクするだけに、野球ファンならずともこの攻防戦から目が離せそうもない。