「中国がトランプ氏の発言を無視し続ければ、アメリカは金融制裁や南シナ海の海上封鎖などによって本気で中国を潰しにかかる可能性が高い。特に南シナ海の問題においては、両国間で何らかの“事故”が起きてしまえば、それを発端に軍事衝突になりかねません。アメリカはトランプ氏のみならず、政権内に対中国強硬派が多くいることも、その危険性を非常に高めているといえます」(軍事ジャーナリスト)
そんな状況の中、中国が加速させているのが宇宙空間での覇権強化だ。
事情に詳しい作家の宮崎正弘氏はこう説明する。
「中国にとっては、宇宙も戦場なんです。その技術開発が、ここへ来て急ピッチで進んでいる。最初はヨチヨチ歩きの状態で人工衛星を飛ばしたり、気象衛星を打ち上げていたが、今ではアメリカやロシアの背中が見えるところまで来ています。数年前には米露が持つ攻撃衛星『キラー衛星』の打ち上げに成功し、世界を驚愕させている。科学技術がそれだけ進んでいるということです」
中国は'92年に有人宇宙船の開発を決定し、無人宇宙船『神舟1号』を打ち上げたのが'99年。2003年には初の有人宇宙船『神舟5号』の打ち上げに成功している。
「さらに昨年10月に打ち上げられた『神舟11号』には、空軍パイロット出身の宇宙飛行士2人が搭乗し、9月に打ち上げ済みの宇宙ステーション『天宮2号』とドッキング。すでに宇宙空間での様々な実験を開始しているのです」(サイエンスライター)
この『天宮2号』は、まだ試験機の段階だ。本格的な宇宙ステーションの本体は来年以降に打ち上げ予定で、これを核のモジュールとしてさらに拡張させ、'22年以降には完成させる予定だという。
「中国政府は現在の国際宇宙ステーション(ISS)が役割を終える'24年以降において、『宇宙ステーションを持つ唯一の国になる』と鼻息荒く、'30年頃をメドに“宇宙空間における大国の地位を確立する”と、『スターウォーズ』ばりの計画実行を断言しています。『神舟11号』と『天宮2号』のドッキングは、それに向け大きな進歩を遂げたことになる」(同)
習近平国家主席も、「『神舟11号』打ち上げ成功により、中国人の宇宙探査の歩みをより大きく遠くに延ばし、宇宙強国建設に新たな貢献をするよう希望する」とのメッセージを発信している。
「これまで“宇宙の2強”は米露でしたが、単独で宇宙ステーションを運用できる高度な技術力を身につければ、安全保障面でも優位に立てる。そんな戦略が透けて見えます」(前出・宮崎氏)
確かに、このまま順調に進めば、壮大な戦略も夢ではなさそうな気配だ。