「最大の激戦地と目されたのが首都圏。経済メディアは東京電力と東京ガスのガチンコ対決とあおったのですが、東ガスはまだ60万世帯程度と低迷し、社内からは『こんなはずじゃ…』とのため息さえ漏れてくる。他の新規参入組は、ほぼ討ち死にです」(電力関係者)
なぜ、新規参入組が苦戦を強いられているのか。証券アナリストが指摘する。
「料金設定が既存の電力会社とそう変わらず、魅力に乏しい。それに手続きが煩わしいとの思いから、様子見を決め込んでいる世帯も多いようです。東電は内心、ホッとしているでしょう」
その東電で4月から送配電事業を担う東京電力パワーグリッドが6月17日、政府の電力・ガス取引監視委員会から業務改善勧告を受けた。新規参入組と契約した世帯が東電から切り替えるために必要な「託送業務システム」に、不具合が相次いでいるというのだ。
「契約変更に伴いスマートメーターに切り替える必要があるのですが、調達が追い付かず、9月頃までズレ込む公算が大きい。東電は調達に責任を持っているのですが…」
新規参入組はこう不満を隠さない。スマートメーターは検針員が不要で、一定の検針日に自動的に電力使用量を読み取り、検針日から4営業日以内にユーザーへ通知することになっている。ところが、不具合が相次いだ結果、データ通信の遅れは6月中旬の時点で5万件にも及んでいたというのだ。
実はスマートメーターの商品不足は4月以前から指摘されていた。東電が対応を急いでいるのは間違いないが、市場には、こんなうがった見方が囁かれている。
「相手は逃げた顧客。“利敵行為に手を貸すことはない”との心理が働いても不思議ではない」
これが事実ならば、恐るべき東電の“必殺技”だ。