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少子化加速で競争激化 大手学習塾・予備校業界の生き残り策

 少子高齢化で子どもの減少傾向が著しい中、学習塾や予備校など教育関連産業のサバイバル競争が激化している。東進ハイスクールや四谷大塚など、学習塾や予備校を運営するナガセ(東京都武蔵野市)は、系列大学受験予備校『早稲田塾』の約半数の11校舎を8月末で閉鎖する。
 その背景を予備校関係者は、こう明かす。
 「早稲田塾は'79年に発足した高校生の現役合格を看板に掲げた塾。試験入学のほかにAO入試、推薦入学で高い実績を誇っていた。その早稲田塾を運営会社サマディから'14年に購入したのがナガセです。それから3年で半分を閉鎖することに対しては、少子化対応への失敗の声もある。しかし、ヤリ手のナガセ、このタイミングで半分閉鎖は計画の範囲内では」

 ナガセの塾購入は前述のように'14年。その直前の'13年には、国が「教育再生実行会議」で、'20年を目途に大学入試改革の大枠を固めている。その改革の最大の狙いは、従来の大学入試センター試験に代わり、新共通テスト、「大学入学希望者学力評価テスト」(仮称)を導入することにある。これまでの暗記重視のマークシート式から思考力、判断力、表現力を重んじる入試制度改革だ。
 「ナガセは早稲田塾の多少の採算性の悪さを織り込みながら新教育改革を睨み、早稲田塾が持っていたAO入試、面接入試のノウハウ資源を手に入れることを狙ったのでは」(同)
 それだけ今、教育をめぐる環境が大きく変化しつつあり、その対応で先手を取ったということか。

 かつて予備校といえば、団塊世代ジュニアが18歳前後頃、つまり'85年から'92年頃までは受験生200万人時代で、ピーク時には受験生の3人に1人は浪人生と言われた全盛期があった。各予備校は有名講師を呼び、大講義室での詰め込み授業だったが、それでも生徒は集まり予備校は左団扇。有名講師となれば年収が億を超えたという。それが急変し始めたのは2000年に入った頃から。少子高齢化の波で予備校や塾は実績やカリキュラムを充実、徹底させるなど、何か大きな特徴がないと生徒を呼び込めない時代に突入したのだ。

 民間調査会社の統計によれば、'16年度の学習塾の倒産は34件で、前年度比61.9%増だという。塾は一時「ゆとり教育」による学力低下の反動で急拡大したが、人口減少に歯止めがかからず、最近は市場が急激に萎んでいる。
 そのため予備校や塾のサバイバル競争はすさまじい。そんな中、生き残りをかけトップを走っているのが、高宮学園が運営する代ゼミこと代々木ゼミナールやナガセだ。

 経営アナリストが言う。
 「全国に27校舎を持ち、全国展開していた代ゼミが、一挙に20校の閉鎖を決めたのは'14年、国が'20年の教育改革方向を示した翌年です。まさにナガセが早稲田塾買収時と合致する。これを考慮すると、今後50年、100年と教育畑で生き延びようとする高宮やナガセは、すでに'14年頃から浪人生で食べる経営モデルが終わりを告げると読み、新たな収益モデルを模索し始めていたということ。そのキーワードは『小中学生と現役高校生』『ネット事業』『多角化』の三つでしょう」

 確かにナガセは、早くから東進ハイスクールの衛星授業でネットを先取りし、四谷大塚で小中学生も確保。早稲田塾買収では痛みを覚悟で「現役高校生合格」のノウハウを取り込んだ。
 一方、代ゼミも「現役高校生、小中学生」に完全シフトし、東大合格を目指す優等生を中学から確保、東大や難関医学部などの合格で屋台骨の入れ替えを進めた。

 浪人生ビジネスモデルから新キーワードを見据えてシフトするのは、ナガセや高宮学園だけではない。教育ビジネスを大きく変える可能性があるとして全世界的に5年ほど前から注目されているのが「エドテック(EdTech)」。「Education(教育)」と「Technology(技術)」を組み合わせた造語だ。
 「米国では、サンフランシスコにミネルバ大学というエドテック大学が出現し、ハーバードに入れる素質を持つ生徒が入学してきている。エドテックの特徴は、質の高い講師の講義を学校や自宅のスマートフォンやタブレットで視聴できるし、さらに動画や3Dなどをふんだんに取り入れ、分かりやすい」(同)

 日本でもこのエドテックを模索する動きがある。さらに多角化において、個別学習塾『明光義塾』を展開する明光ネットワークジャパンは、塾以外に学童保育、サッカースクールなどを展開している。
 「市進ホールディングスは、塾以外に高齢者向けのデイサービス運営を。代ゼミは閉鎖校跡地をホテルやカフェ運営の事業者に貸し付けなども行っている」(同)

 最後に生き残るのは、果たしてどこなのか。

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