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家電量販店存亡の危機 ヤマダ電機のベスト電器買収 公正取引委員会が条件付きで承認した裏事情(1)

 公正取引委員会が12月10日、家電量販店トップのヤマダ電機による同6位のベスト電器買収を承認した。
 両社首脳は今年の7月13日にそろって記者会見し、ベストが年末に行う121億円の第三者割当増資をヤマダが引き受け、7.5%の出資比率を51%に高めてベストを傘下に組み込むと発表。業界初の「売上高2兆円企業の誕生」と話題を集めた。
 それから5カ月、公取委はやっと買収にお墨付きを与えたが、これには前代未聞の条件がついた。ヤマダ電機の競合店舗がベスト電器だけとなっている10地域のうち8店舗を、来年6月末までに他社に売却することが前提条件だったのである。担当記者が解説する。
 「ヤマダのベスト買収をスンナリ認めれば、全国253地域のうち10地域で競合店が消滅して公正な価格競争ができなくなる。そこで8店舗の売却をヤマダ側に要請した結果、ヤマダが応じた。公取委が小売業の買収などの審査に際し、独禁法の観点から店舗売却に踏み込んで承認したのは初めてのケース。今回の措置について公取委が『前例になる』と含みを持たせているのは不気味です」

 ここにいう10地域とは秩父(埼玉県)、宿毛(高知県)、四万十(同)、甘木(福岡県)、唐津(佐賀県)、島原(長崎県)、諫早(同)、大村(同)、人吉(熊本県)、種子島(鹿児島県)の各地域を指す。前述のように売却対象は8店舗だが、いずれの地域でもヤマダ、ベストのどちらの店舗かは問わないという。ただ、この売却計画が両社の思惑通りに運ぶとは限らない。
 「譲渡を持ちかけられた相手は足元を見て買い叩くだろうし、店舗のスタッフをどう処遇するかの問題もある。それでも厳しい生き残りを迫られているベスト電器はヤマダ電機の傘に入り、上場が維持される。だから公取委の承認報道に個人投資家が群がって株価が急上昇したのです。しかし、朗報効果は限定的。ヤマダは当面、ベストの看板を外さず役員も現状維持とソフトムードを演出していますが、遠からず進駐軍色を前面に出すに決まっている。そうでなければ大枚を投じた意味がありません」(関係者)

 ヤマダ電機は2007年8月、九州に強力な地盤を持つベスト電器株を市場で買い集めて提携を迫った。ところが、同意なく株を取得したことに反発したベストはビックカメラと資本・業務提携し、全国制覇の野望をぎらつかせたヤマダを牽制した。それが一転してヤマダの傘下入りを決断したのは、家電エコポイント制度の終了を機に各社が販売不振に陥ったタイミングを見据えて「メーンの西日本シティ銀行がヤマダ電機の下での生き残りを強力にプッシュした」(金融情報筋)からに他ならない。ヤマダ電機とすれば、散々回り道をした揚げ句にやっと目的を達成した図式である。
 これで業界のガリバーとしての地位は安泰になったかに見えるが、ドッコイ世の中そう甘くはない。実は家電量販店の世界そのものが“黒船”来襲に浮き足立っているのだ。

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