場所前に話題を独占したのは綱取りに挑んだ稀勢の里。九州場所で日馬富士、白鵬の両横綱に快勝しているだけに、今度こそ11年も途絶えている日本人横綱の誕生を、と関係者の期待は大変なものだった。ところが、何と9日目までに4敗。右足親指を痛めて千秋楽には休場するというアクシデントにも見舞われ、7勝8敗と負け越してしまった。
「もともと勝負もろいところがあり、これまで何度も肝心なところで負けてファンをがっかりさせていますが、ここまでもろいとは。支度部屋でも負けた日は目を宙に漂わせたまま、何を聞かれても答えず、担当記者たちをシラけさせていました。もしかすると綱を締める器じゃないのかもしれませんね」(協会関係者)
対照的だったのが入幕3場所目の遠藤。先場所は6勝9敗と入門して初めて負け越したが、この場所は尻上がりに調子を上げ、あっさり2ケタの11勝をマーク。12日目、大関・琴奨菊にぶつけられ、さすがにパワー負けしたが、敢闘賞受賞は当然と言っていい。
「人気は、まさにうなぎ上り。館内に売られている名前入りの携帯ストラップなんか、連日、入荷して数時間で売り切れ状態でした。早くもCMにも登場するなど、こんな熱気はあの若貴以来。相撲も他の力士とはセンスが違うって感じで、親方たちも『コイツは本物の大物だ』と太鼓判を押しています」(担当記者)
次の春場所(3月9日初日)は横綱、大関と対戦する上位に上がってくるのは確実。勝負の世界は非情とはいえ、あっという間の新旧交代だった。