「今の若手というのはみんなほんまに巧いですよ。なんでこんなに巧いのかと思ったら、まず僕らとはバックボーンが違う。彼らは生まれた時からのビデオ世代やから、映されることに慣れています。みんな物怖じせずに、明るく、はつらつとやっている。その辺りはたいしたものです。でも彼らが目指すのは、ロケの達人ではなく、スタジオの主役。中にはそんな下心が見え見えの人もいますから。そのあたりがちょっと寂しいですね。ロケ仕事にはロケ仕事ならではの魅力があり、それに気が付かないというのはもったいないと思うのですが…」
苦い言葉はまだ続く。
「それから、今の若手は力量がほとんど平均点。30点もあれば100点オーバーの時もあるという型破りの人が少なくなりました。そして最近の現場は、知らない人相手に毒を吐くということが、昔ほど否定されていません。それをええことに、自分たちが目立ちたいばっかりに、普通のおっちゃん、おばちゃんを無神経にいじるのにはどうかと思いますね。素人いじりは慎重にやってほしい。素人いじりの裏には、相手にきちんと伝わる優しさがないと変な誤解を生むだけですよ。それに、自分のスタイル、キャラクターができてないのに素人いじりをやっても仕方ないと思うんですけどね。僕自身は、現場では自分のキャラクターを立てるより、とにかく取材相手を立てることを心がけています。その方がリポートが面白くなるし、最終的には、自分にとってプラスになると思うからです。でも、そう思うようになったのは最近の話。これもやっぱり長くやってきたからこその境地でしょうか(笑)」
ロケや舞台を離れると、趣味人で知られるタージン。中でも有名なのがNFL観戦だ。シーズン中に渡米するほどの熱の入れよう。その造詣の深さは趣味の域を超え、テレビの実況中継を担当するほどである。
「僕には選手としての経験はありません。でも熱烈なファンやからこそ、NFLの楽しさ、凄さを伝えられるという自信はあります」
話し方に熱がこもっていた。
多様な現場、多彩な人との出会いの中で過ごしたリポーター人生。“ロケの神様”は、自らについてこう語る。
「本来の僕は人見知りがきつくて引っ込み思案。普通やったら自分の能力の半分も出せる人間やありません。それを100%近くまで出せるというのは、僕を支えてくれる皆様のおかげ。ですから僕は、スタッフや周辺にいる人たちとのコミュニケーションを大切にしたいのです」
これはリポーターのみならず、一般の社会人にも通用する格言であろう。
最後に、今後の抱負を聞いてみると、いたずらっぽい笑顔を浮かべ、「最近、雑誌のリポート仕事にすごく興味があるんです。週刊実話でリポーターというのはどうでしょう? 僕、何でもやりますよッ!」
旺盛なサービス精神は、さすがに関西人である。
(文・福原一緒)
たーじん
1962年、大阪府出身。素人時代からテレビ出演を果たし有名になる。リポーターとして芸能界デビューすると、後にNHK連ドラなど俳優業にも進出。