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菅原道真の祟りか 関西電力の不動産開発会社と大阪・千里ニュータウンの景観騒動(2)

 上新田天神社の中村暢晃宮司は、1972年から現在の地位にある。高層マンションの出現を阻止できなかった不手際を神に謝るために、断食まで試みたという。宮司が語る。
 「3年ほど前に現在の計画に気付き、現在の景観を維持したいと天神社氏子総代会や上新田自治会などによって『上新田天神社の景観を守る会』が結成されました。神社周辺地域の開発については、土地区画準備整理組合ができた10数年前からあり、豊中市も予算を組んで環境保全に配慮した適切な開発を目指していたのです。ところが、地権者も相続税などの問題を抱え、利害が対立したことで組合は解散、その後一人の地権者によって、突然現在の計画が浮上したのです。地権者がマンション開発業者に土地を売ることは当然の権利で自由です。ですから守る会は、マンションが建つことに反対しているのではありません。少々利益を抑え、階層数をせめて6ないし7階にしてほしいとMID社や関電に対し、頭を下げてお願いしているのです。それでも聞く耳を持ってもらえませんでした」

 守る会では、頭を下げるだけでなく、低層化を求める8000名の署名をMID社に渡したが効果はなかった。行政側も。「当該地域は中高層マンションが建築できる条例があり、それに則っている以上、異を唱えられるものではないのです」と素っ気ない。
 マンションは眼下に神社の森が広がっており、ここに将来景観を阻害する建築物は建たないことを売りにしているので、低層化は受け入れられないのだろう。

 とんど祭の開催も危機を迎える懸念もある。
 「とんど祭は、神への感謝の気持ちと、その年の豊作・無病息災などを祈って、正月に全国各地で行われている火焚きの行事です。その中で上新田天神社のとんど祭は、毎年1月14日夕刻に社前の広場で行われます。祈祷を受けた人が御神燈より松明に火をもらい、杉、ヒノキ、竹などで作り上げた『とんど』に灯された火が真上に上がると、その年は豊作になるといわれています。そうなるとですよ、将来住むであろうマンション高層階の住民は、この神事の煙やススに見舞われることになり、権利主張の強い住民から苦情が出ないとも限らない。祭りの縮小や廃止に追い込まれやしないかと心配なのです」(別の氏子総代)

 さて、MID社の“氏神”ともいえる関電といえば、「原発なしでは真夏の電力需要は賄えない」と電力不足をあおって、一気に大飯原発を再稼働させたことはすでに周知だ。
 「大飯原発は再稼働されたが、敷地内を通る断層が『活断層ではないと否定する資料はほとんどない』と専門家は警告している。設置許可申請の際に出された資料の質が悪く、活断層の判定がズサンだったからです。この断層が地震で動くと、原子炉の直下を走る別の断層が連動する恐れもある。滋賀県の嘉田由紀子知事や大阪市の橋下徹市長も『経済界の強い要望もあり、臨時的にやむを得ない』『事実上容認する』と、いったんは振り上げたこぶしを下ろしてしまった。結局、財界や経産省には逆らえない。みんな長いモノに巻かれるのです」(守る会会員市議)

 長いモノの関電には、みんなが巻かれる。大飯再稼働でも地元住民への説明は極めて不十分だった。関電の子会社MID社も“親”にソックリだ。
 「古来日本は天照大神に見られるように、太陽信仰を貫いてきました。日本人は自然エネルギーに敬意を払ってきたのです。原発から発生させる核エネルギーは、その伝でいくと、神をも恐れぬ所業といえます。今回の福島第一原発事故では、住む場所や身体が汚染されたわけですが、景観を破壊するということは、精神文化の汚染につながると思うのです。神社を中心とする400年間も続いた調和を無視し、他者を思いやることのできない社会および企業に、私たちは傷つき深く絶望しているのです」(前出の中村宮司)

 住む人間により街は変わり行くものだが、その地域の歴史や心を無視すれば、奥行きのない薄っぺらな街になる。当たり前のそんなこともわからないなら、都市開発を掲げる資格はない。

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