トランプさんが言うところのアメリカ・ファースト。これね、よく考えたら小池百合子の「都民ファースト」とよく似ていますよね。ただ、都知事の小池さんがまだまだ机上の理論を出ていない理論派やのに、トランプさんは経済人として修羅場を踏んだ実践派。小池さんが今後、総理大臣を目指そうというのなら、これからもっと修羅場を踏まんといかんでしょうね。ま、私が言わんでもそうなるでしょうが。橋下さんや前の大統領のオバマさんとの比較でも、同じことが言えます。橋下さんも色々とブチ上げたけど、多くは理想論。理想を語るコトでメシ食うてる政治家の典型みたいな人でした。オバマさんも理想主義者でしたわな。
つまり、トランプさんがなんで大統領になったかと言えば、経済や国防の問題で、アメリカ国民の少なくとも半分以上が、理論ではあかん、実践でないとダメやということに気が付いたからやと思います。大切なんは、そこを日本はどう見るかということでしょう。
それから小池さんという人について言うたら、議会のドンやら都政の守旧派を相手に1人でよう頑張っていると思います。相手の話を聞くだけ聞いて、聞いたようなフリをして、その後、きっちりやり返す。大阪弁で言うたら“いけずなおばはん”です。そのあたりの駆け引きは、さすがは小沢一郎仕込み。しかし、孤独な戦いにはやはり限度がある。その点をどう考えてはるかでしょうね。
私がこういう風に偉そうなことを言うと、「あいつは毒舌や」と言われます。でも、しゃべりを商売にしている身からすれば、人間突き詰めて本音を言うたら、それは毒舌になるんです。
そやから、理想論で綺麗事言うてるようにしか聞こえない安倍首相なんか、全然本音を言うてない。まだ小池さんの方が、豊洲の問題にしてもオリンピックにしても、毒吐いて本音を言うてるように聞こえます。
だいたい、ズバズバ本音を言うことには、何かみっともないイメージがあるもんですが、国内、国外で、日本はこれからは否が応でも本音で駆け引きせんならん時代になります。政治家も覚悟を決めてやってもらわんと、日本はほんまにおかしな国になりまっせ。
西川のりお
1951年奈良県生まれ。高校卒業前に西川きよしに入門。'75年に上方よしおとのコンビで「西川のりお・上方よしお」を結成。80年代の漫才ブームで大ブレイクした。現在はコメンテーター芸人としても活動。著書に『橋下徹はなぜ大阪で独裁政治ができるのか?』(ヨシモトブックス)がある。