血液は、心臓から大動脈へ、さらに動脈を通って網の目のように広がった毛細血管の先端にまで行き届き、ここからまた静脈を通って同じように心臓に戻る。この過程で血液は酸素や栄養分を運び、二酸化炭素や老廃物を排泄機関に運ぶ重要な役割を担っているのだ。従って、酸素が血液によってうまく運ばれないと酸欠状態になり、貧血などの原因になる。
こうして血液を採取し、顕微鏡で覗くといろんな成分が含まれていることがわかる。これが前述した採血検査の神髄である。
血液の採取は、何本かの容器に分けて採血する。理由は、調べたい内容によって血液を固まらせないで採取するもの、固まらせて血清成分のみを必要とするものなどを仕分けるためだ。
では、採血でわかる主だった項目を紹介してみよう。
〈検血・血算検査〉
骨髄で作られ、血管の中を流れている血液の細胞(血球)の状態がわかり、貧血、多血症、白血病炎症の有無が判別できる。
〈肝機能検査〉
肝臓の細胞から流れ出てくる酵素の量や、肝臓で分解されたものや合成されて出てくる物の量を調べる。肝炎、アルコールや薬物による肝障害、肝硬変などがわかる。
〈脂質検査=善玉・悪玉コレステロールなど〉
血液の中を流れている脂肪分を調べ、動脈硬化を起こしやすいか、どうか。栄養の状態もわかる。高過ぎても、低すぎても良くない。中性脂肪、高脂血症、高コレステロール血症などの病気がわかる。
〈腎機能検査〉
腎臓から尿に排拙されるべき老廃物の量を調べ、腎臓の働き具合を診る。腎不全、高尿酸血症、痛風などがわかる。
〈血糖値検査〉
細胞のエネルギー源となるブドウ糖の量を測る。ヘモグロビン・エーワンシーは過去1〜2カ月の平均的な血糖の状態がわかる。糖尿病。
〈膵機能検査〉
膵臓から出てくる消化酵素の量を調べる。慢性膵炎、急性膵炎などが判明する。
〈炎症反応検査〉
体の中で炎症が起こっていないかを調べる。感染症、膠原病(自己免疫の病気)などがわかる。
〈血清検査〉
肝炎のウイルスや梅毒に罹ったことがあるかどうか、またリウマチの素因がわかる。慢性ウイルス性肝炎、梅毒、関節リウマチなどがわかる。
採血による検査は、大きな病院に限らず、町中のクリニックや医院などの小規模な医療機関でも行っている。ただ、こうした小規模の医療機関には検査機能がないところも多く、採血された血液は検査設備の整った大きな病院や専門の検査施設に回した後、1週間以内で判定される。
日本臨床検査標準協議会(JCCLS)では「標準採血法ガイドライン」を作成。各施設での採血手技の方向性と、患者に十分な説明をし、混乱を招かないように統一を図るとしている。
同協議会としては「患者のみなさんから信頼と安心を得るための努力を今後もしていきたい」と、ガイドラインのさらなる改善と強化に務めるという。