短期間であれば問題ありませんが、長引くとその状態に身体が馴染んでしまい、早い時間にベッドに入っても、なかなか寝付けなくなったりします。こうした睡眠の乱れを解消するにはどうしたらいいのでしょうか。
今回は、医師の小田切ヨシカズ先生に、「睡眠の改善や質を上げる方法」についてお聞きしました。
■睡眠はメラトニンにより促される
「睡眠には、脳内物質であるメラトニンの分泌が大きく関係しています。メラトニンは脳内の松果体(しょうかたい)という部分から分泌され、夜になって暗くなると、それが活発化します。メラトニンの分泌量が増えると、副交感神経が優位になり、身体がリラックスした状態となり、睡眠が促されます。生活が乱れ、体内時計がズレてくると、メラトニンの分泌が正常に行われなくなり、なかなか寝付けないといった状態に陥るわけです」
■セロトニンとメラトニンの関係
「メラトニンの分泌に関係の深いのが、セロトニンです。セロトニンは“幸せホルモン”とも呼ばれる脳内物質で、分泌されると心も身体も穏やかな状態になります。セロトニンは主に日中に分泌され、これを原料にして夜になるとメラトニンが分泌されます。ですから、両者の分泌量は比例していると言えます。メラトニンの分泌量を増やしたければ、セロトニンを増やす必要があります」
■セロトニンの分泌量を増やすには
「メラトニンの原料となるセロトニンの分泌量を増やすには、日中に太陽を浴びるのが有効です。梅雨時期など、曇りがちな天気のときに気分が沈んでしまうのは、セロトニンの分泌量が関係しています。ですからまずは規則正しい生活をして、しっかり朝起きて、昼は外に出ることです。セロトニンの主な原料となるのが、トリプトファンという必須アミノ酸なので、これを多く含むものを摂取することも効果があります。多く含むのは、赤みの魚や肉類、豆類や乳製品です。また、寝る際に部屋の明かりを暗くするなどの行為も、メラトニンの分泌を促すのには有効です。そして朝は、陽の光を浴びると、メラトニンの分泌がおさまってスッキリした目覚めが訪れます」
生活のリズムの乱れも、習慣化してしまうとなかなか改善は難しくなります。睡眠不足が、身体にさらなる悪影響をもたらす可能性もあります。悪化の一途をたどることにならないよう、日々気を付けましょう。
【取材協力】小田切ヨシカズ
湘南育ちのサーファー医師。ワークライフバランス重視。現在、横浜の内科クリニックに勤務中。