「不正検査があったのは、2017年12月の成田発米シカゴ行きの便。問題の機長は、予備のアルコール感知器で事前検査をしたところ、社内基準の呼気1リットル当たり0.1ミリに近い数値が出て不安になり、正式な検査を部下のパイロットに受けさせた」(全国紙記者)
身代わりとなったパイロットが、後に社内で告発。この2人には処分が下ったが、日本航空は国交省への報告を行っていなかった。
さらに、日本航空が新型のアルコール感知器を導入した'17年8月から昨年11月の間で、操縦士が意図的に乗務前のアルコール検査をしていなかったケースが163件あったことも明らかになった。
「日本航空は'10年に会社更生法適用を申請。業績回復を重視して路線を拡大したが、そのシワ寄せがパイロットの労働負荷となっていたようです。彼らは、そうしたストレスから逃れる手段として、アルコールに頼っていた疑いがあります」(経済エコノミスト)
こうした労働環境などから、以前は定年まで勤め上げるのが当たり前だった日本航空のパイロットたちが、外資系エアラインに転職するケースも増えている。
近年、LCC(格安航空会社)の台頭で慢性的なパイロット不足が続いており、人材の流出は経営的にも致命的なダメージになりかねない。
「パイロットの育成には時間やコストがかかるため、引き抜きが横行しています。中国や中東のエアラインは、年収4000万円という破格の報酬で世界中からパイロットを集めている状態。LCCでも年収2000万円は提示しているようです」(外資系航空会社の社員)
2030年頃には、パイロットの一斉退職問題も懸念されており、争奪戦がますます激化する見込みだ。日本航空は、成長と安全の狭間で難しい舵取りが求められる。パイロットは飛行機をコントロールする前に、自分をコントロールすることが重要であることは言うまでもない。