エネルギー関連関係者がこう解説する。
「震災の翌年の'12年に437万kwだった太陽光発電量は、'14年には倍近くの987万kwまで伸びた。これは国が音頭を取り各電力会社に太陽光発電を高値買い取りさせた制度(FIT)のおかげ。つまり、国民の電気料金に太陽光買い取り価格が上乗せされ高値で売れたために、太陽光関連業者はバブル状態となったのです」
この先頭を切ったのは、ソフトバンクグループだった。関連子会社SBエナジーを設立し、北海道や九州などを中心に次々とメガソーラーを建設。さらに、モンゴルや中国、韓国、インド、そして日本を視野に入れ、その国々を太陽光発電で結ぶ「アジア・スーパー・グリッド構想」も着々と進行中だという。
しかし、そうした動きを見ながら太陽光事業関係者はこう言うのだ。
「孫さんのところは規模も違うし別格ですよ。現実的には、どの太陽光業者も最近はバブルが弾けて四苦八苦。買い取り価格が毎年2円から3円下がり、設置者も減少気味で苦しい経営に陥った。国民負担の大きさを考えると、買い取り価格は今後、ますます下がるのは必至」
確かに大手信用調査会社などの調べでも、太陽光発電事業で関連企業の倒産が相次いでいる。'17年1〜6月の倒産件数は、前年同期比2.2倍の50件にものぼるという。
さらに、今年4月には改正FIT制度が新たに施行され、送電線を持つ電力会社と契約せず、認可だけを取っている発電事業者は認可取り消しの動き。そのため'17年度はさらに倒産が増加し、100件を超える可能性もあると指摘されているほどだ。
「国内ではそうした影響で勢いのあった企業が、リストラなど事業縮小で何とか生き延びようと必死です」(同)
一方、欧米でも太陽光発電企業の不況は深刻な状態となっている。
「太陽光発電の先進国・ドイツでは、かつてのトップランナー企業が次々と破綻に追い込まれている。'98年に創業の世界の太陽光発電の草分け的企業『ソーラーワールド』も、今年5月に破綻。かつて世界シェア首位だった『Qセルズ』も'12年破綻後に韓国企業の傘下になっている。また、ノルウェーの『ソーラー』も、生産拠点をシンガポールに移転しています」(企業アナリスト)
そんな中でいま、太陽光発電で勢いのあるのがアジア、特に中国やインドだ。中国は'15年末の太陽光発電の累積導入量で4300万kwに達し、ドイツを抜き世界最大の太陽光発電国になった。
では、一方の日本は太陽光発電の買い上げ価格抑制などでドイツのように最終コーナーに差し掛かかり、もはやこれまでなのか。
シンクタンク関係者が言う。
「中国は化石燃料、石炭などの環境汚染で悩まされているため、より原発や太陽光にシフトしていく。日本の太陽光の累積設備容量は中国に次ぎドイツを抜いて世界第2位。仮に今後、買い取り価格が下がり続けても、原発の恐ろしさを間近に体験した日本だけに、家庭用太陽光が安くなり、さらに最大のネックである蓄電技術が大幅に進歩すれば、今の大手電力会社からの電気購入というシステムが激変する可能性はある。つまり、再生可能エネルギーの太陽光発電が電力会社料金と同等か、送電網が安価な状態であれば、日本は各家庭の屋根がほとんど自ら発電所になる可能性を秘めています」
その最大のポイントは、太陽光蓄電池の開発だと言われている。最先端の動きとしては、今やトヨタをしのぐ存在感を示す米自動車メーカー、テスラ社が最新蓄電池『パワーウォール』を開発し、日本での販売を模索中だ。
「日本での発売価格は、同等他社製品の3分1程度と囁かれています。蓄電池の価格破壊が進めば、集熱パネルのソーラーウォールとの利用で、電力会社から電気を買うよりも安い時代が到来する」(同)
インド再生エネ大手のヒンドゥスタン・パワーも、そうした日本の動きには敏感だ。'18年までに日本で15カ所の太陽光発電施設を建設。発電能力は合計150メガワットで、投資額は約260〜300億円だという。
世界最大の原発被害国日本は、世界の太陽光発電の壮大な実験場になる可能性が最も高い。となれば当然、日本企業も息を吹き返すのは必至だ。