「酒造りに最適な“日本酒米”を自作して造り出すという匠の技が、職人文化の根強い欧州で評価されているのです」(食文化研究家)
火付け役は'00年、英・ロンドンの高級デパートで行われた「東京ライフ」と名付けられたフェアだった。
「日本全国から集められた数十種類の日本酒が紹介されたのですが、日本酒の繊細かつ複雑な味わいに魅了されたフランス人ソムリエのザビエル・シャプルウ氏が、すっかり日本酒の虜になり、'04年に日本の地酒をヨーロッパに輸入する会社を設立。続いて『SAKEソムリエ』を養成する協会を立ち上げました」(同)
イギリス、フランスを発火点としたSAKEブームは、その後ドイツ、スイスイタリア、スペインへと飛び火、さらに日本食ブームに沸く北欧をうかがっている。欧州全土で、日本酒がワインと同じように飲まれる日はそう遠くないのだ。
ところが、そんなブームに水を差す一件が発覚した。安い日本酒に高級品の“大吟醸”ラベルを貼って販売していた『浪花酒造』(大阪府阪南市)の不正表示が発覚したのだ。同酒造は江戸中期創業の老舗で、'08年の北海道洞爺湖サミットでは、大吟醸が各国のVIPに振る舞われたことで知られる。
「名古屋や金沢の老舗『萬乗醸造』『中村酒造』などは、こぞって欧州に進出しています。欧州のソムリエたちは、兵庫県産の山田錦を嗅ぎ分ける技術を持っており、安酒を混入したものなど一発で見抜くので、この一件で日本酒の評価が下がることはないでしょう」(同)
それにしても、欧州人がワイングラスで日本酒を“飲る”姿は違和感がありありだ。やっぱり『SAKE』はお猪口だろう。