そんなキナ臭い挑発の中、米トランプ政権のティラーソン国務長官が、3月15日から日本、韓国、中国をそれぞれ初訪問した。中でも“露骨”だったのは17日の訪韓時、ブルックス在韓米軍司令官とともに板門店(南北境界線)を訪れたものの、尹炳世外相との夕食会には出席しなかったことだ。
「体調不良を理由に断ったとの報道がありましたが、ティラーソン氏は『韓国側は私たちを夕食会に招いていない』と述べ、そもそも予定されていなかったことを明かしました。いずれにせよ“死に体”の韓国は眼中になく、中国とどう向き合うかで頭がいっぱいだったはずです」(通信社記者)
トランプ大統領は、かねてオバマ前大統領が表明していた“戦略的忍耐”を見直すと強調している。今後、北朝鮮の大陸間弾道ミサイルがグアムを越え、ハワイを越えるような事態が起きた場合、米中は金正恩政権を打倒し、新たな政権へと交代させるシナリオを共有するつもりだが、正恩労働党委員長の異母兄である金正男氏が暗殺された現在、そのシナリオに狂いが生じている。正恩委員長がこの事態を読んでいたとすれば、恐ろしいほどの戦略家だ。
「中国は『北朝鮮は残すが現政権は倒す』と考えていますが、米国主導で政権が打倒されると、米韓主導の朝鮮半島統一が実現します。そうなると、国境線で米軍と対峙しなければならなくなる。また、イラクの二の舞いを避けるために、次の政権の体制をしっかり築かないと難民問題が起こることを、日中韓3カ国は懸念しています」(同)
中国の王毅外相はティラーソン国務長官との会談で、北朝鮮に核とミサイル開発を停止するよう要求する一方、米韓両国に軍事演習を一時停止することも提案していた。
「この二つを同列に扱うのはおかしい。そもそも北朝鮮の弾道ミサイル発射は国連安全保障理事会決議に違反しているからです。ですから米国としては、中国が韓国へのTHAAD(高高度迎撃ミサイルシステム)配備に強く反対しているのも理解し難いのです。中国は北朝鮮の最大の貿易相手国であり、北の体制崩壊につながりかねない強力な制裁には慎重な姿勢を崩そうとしないのは、地域の大国としては極めて無責任と言わざるを得ません」(大手紙元ソウル支局長)
米中の決断のタイミングが日本の命運を左右しかねない――。北、中、韓の国境線の火薬庫にアメリカはいつ手を突っ込む気か? それとも、狂犬・金正恩を黙らせる政治圧がトランプ大統領にはないということか。“核で焦土化”を平気で口にする金正恩政権をこれ以上野放しにはできない。