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リハビリ視察4666日 長嶋茂雄が消えた全記録①

 この夏、ミスターの姿がプッツリと消えた。球場や公のイベントに現れなくなったという意味ではない。この十数年、欠かさず日課にしていたリハビリにも姿を現さなくなったのだ。

 筆者が最後に長嶋茂雄(82)のリハビリ姿を視認したのは6月30日のことだった。この日は土曜日で、いつものようにお付きの運転手が運転する車で東京・港区にある『国立科学博物館附属自然教育園』に到着した長嶋は、ウオーキングを開始。普通よりも少し早い、いわゆる早歩きのペースで、隣には男女2名の介護人が付き添っていた。

 早歩きを終えると、今度はバットを手にして30回の素振りを行うのがルーティンだ。もちろん、バットを持つのは左手であり、スイングにも勢いがあるわけではない。だが、そのフォームには往年の面影が残っている。現役時代から何十年経とうが、病で障害を抱えようがミスターはミスターなのだ。いつものメニューをこなすと、いつものように静かに帰って行った。

 だが、この日を最後に、ミスターのリハビリ通いはピタリと止まってしまった。翌日から、予定の時間をすぎても公園には誰も姿を見せなくなったのだ。

 これまでミスターがリハビリを休んだのは大雪が降った日や、風邪で体調を崩したときなど本当に数えるほどしかない。それ以外は、たとえ台風がやってきて大雨が降ろうと、明け方に氷点下となり公園の水たまりに氷が張るような寒い日だろうと、この日課を続けてきたのだ。

 それでも前日までの元気な姿を見ていた筆者は深刻には考えず、最初は「今日は自宅散歩かな」と思っていた。これまでも公園に来ない日は何度かあって、少し体調が悪い日には、公園ではなく、自宅周辺での散歩リハビリに切り替えることがあることを知っていたからだ。

 ところが、事態は思った以上に深刻だった。ミスターが公園に来なくなってから1週間後の7月8日に予定されていたイベントも「風邪」を理由に欠席する。

 これは毎年、北海道のザ・ノースカントリーゴルフクラブで開催されている男子プロゴルフのトーナメント『長嶋茂雄招待セガサミーカップ』で、名前を冠している通り、ミスターは大会名誉会長として最終日に登場することが通例となっていた。欠席するのは2007年に大会名誉会長に就任して以降、初めてのことだった。それから約1カ月半、筆者は変わらず毎日現場に足を運んでチェックを続けたが、長嶋の姿は一度も見ることができなかった。

 8月に入ると、お付きの運転手が奇妙な動きを見せ始めた。
 長嶋の朝は規則正しい。迎えの車はいつも朝6時には駐車場に入って待機しており、長嶋が家を出るのはいつも7時15分頃。そこから車に乗ってリハビリに出掛けていた。
 ところが、長嶋がリハビリに姿を見せなくなってからも、迎えの車は毎朝時間通りに自宅にやってきて、時刻通りに出掛けていくのだ。ただし、車はリハビリ先には現れない。

「次女の三奈さんが入院を隠すため、運転手さんに偽装工作を頼んでいたようです。長嶋さんは別に隠す必要はないと思っていたようですが、いつものように周囲は極秘にしたかった。マスコミに漏れないように気を配っていましたからね」(長嶋家に近い人物)

 介護士からのストップ指令があっても、リハビリを休もうとしなかった長嶋がこれほどまでに長い間、休むのは確かにおかしかった。

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スポーツジャーナリスト・吉見健明
1946年生まれ。スポーツニッポン新聞社大阪本社報道部(プロ野球担当&副部長)を経てフリーに。法政一高で田淵幸一と正捕手を争い、法大野球部では田淵、山本浩二らと苦楽を共にした。スポニチ時代は“南海・野村監督解任”などスクープを連発した名物記者。『参謀』(森繁和著、講談社)プロデュース。著書多数。

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