A:冬季のうつ病でしょう。うつ病には、特定の季節のみ気分が落ち込み、憂鬱になったり、体がだるくなったりすることがあります。
その代表的なものが、日照時間が短い冬に起こるタイプで、冬季うつ病と呼ばれています。この病気は、以前から北の地方に多いことがわかっています。
●日照時間が短いことが関係
人間には体内時計があり、1日25時間の周期で動きます。地球の1日と1時間の誤差がありますが、朝日を浴びることでセロトニンが分泌されて修正されます。だから、24時間での生活リズムに順応するわけです。
セロトニンはやる気や元気に関係するホルモン。セロトニンが分泌され、活動が促されます。セロトニンの分泌は、睡眠を促すホルモンのメラトニンの分泌と関係があります。セロトニンが分泌されて15〜16時間後にメラトニンが分泌され始めるのです。
ところが冬は昼の時間が短く、曇りがちで、太陽に当たる時間も短い。出勤時間が早く、しかもデスクワークなら、ほぼ1日、日光に当たることがありません。
つまり、体内時計の1日24時間への修正が効かなくなるし、気分が落ち込みます。
●早寝早起きが基本
セロトニンが正常に分泌されなければ、夜、セロトニンと関係するメラトニンが分泌される時間も遅くなります。
必然的に夜遅い時間にならないと眠くならないし、朝起きる時間が遅くなることもあります。すると結果的に、朝は太陽に当たる機会が少ないため、なおさらメラトニンの分泌が抑えられます。
改善法としては、早寝早起きが基本。メラトニンは、夜の10時から2時の間にもっとも分泌され、この時間に就寝することが大事。そうすると必然的に朝は早起きできます。
とはいえ、冬は曇り空のことが多いので、早起きしても、日光に当たれるとは限りません。特に早朝出勤し、しかもデスクワークの場合、日光に当たる機会はあまりないでしょう。
そういう場合、起床してから家を出るまでの間、室内の照明を他の季節よりも明るくするだけで、セロトニンの分泌を促します。日光だけでなく、人工の光に当たることによってもうつ病の予防や改善に効果があることがわかっています。
また、出勤後もオフィスでブレイク・タイムを作り、日光に当たる工夫をするとよいでしょう。
牧 典彦氏(小山病院院長)
自律神経免疫療法(刺絡)や加圧トレーニング、温熱療法、オゾン療法など保険診療の枠に捕われずベストな治療を牧病院(大阪市)で実践。小山病院(大阪市)院長。