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EV電気自動車規格争い 欧米包囲網の影でほくそ笑む 「ハイブリッド車」に命運を懸ける トヨタの“商魂”(1)

 「これでEV(電気自動車)の普及に急ブレーキがかかるかもしれない。トヨタは含み笑いを噛み殺すのに必死なんじゃないか」
 業界関係者が、こんな皮肉を口にしたその理由は、EV向け急速充電器の標準化をめぐって日本メーカーと欧米メーカーの主導権争いが激化する中、世界の自動車技術の規格に影響力がある米国自動車技術者協会(SAEインターナショナル)が、欧米メーカーの推す《コンボ方式》を採用すると発表したからである。
 このニュース、なぜか国内ではほとんど報道されていないが、これを機に欧米の対日包囲網が加速すれば、日本の自動車産業は大ダメージを負うことになる。

 それにしても、日本を代表するトヨタの“含み笑い”とは尋常ではない。同社の事情は後述するとして、EV充電器の規格争いについては簡単に説明する必要があろう。
 実用化で先行する日本は、家庭電源を使う普通充電と急速充電の2種類のプラグが必要な《チャデモ方式》を採用している。これに対して米GM、独フォルクスワーゲンなど欧米の主要メーカー8社は、普通充電と急速充電が一体化した《コンボ方式》を打ち出している。ただ、日産の『リーフ』や三菱自動車の『アイ・ミーブ』など電気自動車で先行する日本と違って、こちらは企画段階にすぎない。実用化は早くても「2013年以降」とされ、コンボ方式の充電器を採用したEV車は、まだ世界に1台も登場していないのだ。

 それにもかかわらず、なぜ欧米8社は日本に対抗してコンボ方式を唱え、SAEインターナショナルまでが彼らを後押しするのか。
 「EV車は次世代エコカーの本命と目され、将来は巨大市場に育つ。プライドの高いGMなどにとって、ドル箱市場を日本勢が独占する事態など、考えただけで胸クソが悪いに違いありません。だからこそ主導権を奪回すべく、強引に横ヤリを入れたのです」(業界筋)

 チャデモ、コンボ両陣営ともIEC(国際電気標準会議)などに自前の規格を世界標準として認めるよう働きかけており、IECは'13年中にも「双方を最終承認する方針」(関係者)とされる。ただ、複数の規格が競争すれば消費者の買い控えを招き、世界的なEV車の普及に水を差しかねない。そこで国内のEVメーカーで構成するチャデモ協議会(志賀俊之会長=日産自動車COO)は、「両陣営はコネクターの形状などわずか5%の部分しか違わないことから、相互に互換性を持たせるべくコンボ陣営との共存を呼びかけているが、まだ前向きの返事はない」(同)というのが実情だ。そこへSAEインターナショナルの追い打ちとくれば、日本勢は見事にはしごを外された格好である。

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