タイトルの「853」は、京都府警本部の住所。なにも、そんなのドラマ名にもってこなくても…。この853に戻ってきた昭和の生き残りと呼ばれる男・加茂伸之介(寺脇)が、仲間とぶつかりあいながらも難事件を解決していく刑事ドラマ。ノベライズの著者が脚本家(櫻井武晴、岩下悠子)の名前になっているところから、人気小説の映像化ではないみたい。
テレビ朝日は最初っからシリーズ化を決めており、「はぐれ刑事純情派」、「相棒」の“何匹めかのドジョウ”をねらっている。さてヒットの女神は「853」微笑んでいるか?というとそうでもなく、視聴率はギリギリ10%。やはりピンの寺脇の隣に「紅茶飲んでる人」がいないのは寂しい。その他、田辺誠一、金田明夫、など濃いけど地味な共演者の中で一人気を吐いているのが、いつのまにか産後復帰していた「さびしんぼう」富田靖子。もともと演技派だったが、このドラマでは故・藤田まこと主演の「はぐれ刑事純情派」の安浦刑事ばりの温情刑事・佐々木雪子をじっくりと演じている。
第6話「生きているのも悪くない!」は、おばさん(キムラ緑子)が、若い女性をかばい男性殺しの犯人と名乗り出るが、真犯人は実は女性の恋人だったというお話。雪子刑事の“温情”がまわりくどい推理展開を更にややこしくするという、新手なドラマ手法。とにかくウソ自供をする犯人を信じてみたり、窓辺に向かってたっぷり情感込めてつぶやいてみたりする富田。警察って案外ヒマなのね。
日本人独特の温情がまんま「はぐれ刑事純情派」な加茂と雪子に対し、少々強引な捜査で検挙率を挙げ、加茂と対立する係長の武藤(田辺誠一)はクールで海外ドラマの刑事っぽい。ついでに言うと、富田以外あんまり有名な女優が出ていないけど、 コミカルでキュートな、情報処理の刑事・綾松なみえ(新谷真弓)が必見。でもこんな人、「クリミナルマインド」にも出てたよねー。(チャッピー)