海上保安庁は2006年以降、静岡県沖から宮崎県沖の震源想定域内の15地点で海底の地盤の変動について観測。結果、日向灘や東海地震の震源域の南西側、さらに1946年に発生した南海地震の震源域の沖合でも“ひずみ”が蓄積されていたことが判明したのだ。
「南海トラフ地震は、海のプレートが陸のプレートの下に潜り込む境界で起きる。“ひずみ”は潜り込む際に引きずられた陸のプレートに蓄積し、それが限界に達して元に戻ろうとする時に地震が発生する。海保は、海底の各地点に観測機器を設置して正確な位置が分かる観測船を使い、それまで不可能だった地殻変動を明らかにしたのです」(サイエンスライター)
'06年〜'15年度の10年間のデータ分析では、遠州灘や紀伊半島沖、四国の南方沖などに、年間5センチ程度のひずみを蓄積する「強ひずみ域」があることも分かったという。
その「強ひずみ域」は、想定東海地震の震源域やマグニチュードM8.0だった南海地震の震源域から、さらに南西側に広がっていた。
また“ひずみ”が蓄積されている日向灘沖といえば、4月14日に発生した熊本地震は日向灘をフィリピン海プレートが押し、それが熊本を走る活断層を刺激したことで誘発したと言われている。
自身の研究ホームページでも、日向灘南部沖で大地震が発生する時期を2014年±4年と予測している琉球大理学部名誉教授の木村政昭氏が言う。
「フィリピン海プレートのプレッシャーは相当強い。そのため、日向灘の海域でM7.5の大地震が発生すると予測しています」
海上保安庁のデータと木村氏の予測からも、すでに秒読み段階の可能性が高い日向灘での巨大地震。防災・危機管理ジャーナリストの渡辺実氏は、さらにそこから始まる悪夢の連鎖を指摘する。
「今回の海保のデータは、南海トラフ地震が数年以内に起きるという、想定通りのものでした。貞観(859年〜877年)の天地動乱の時代の一つ一つのプロセスを、目の当たりにする思いです。それにしても、どこから割れ始めるのか。南海トラフでは、かつて南海、東南海、東海の3連弾という超巨大地震も起きている。南海トラフの西端、つまり、日向灘が割れれば、順々に震源が北上していく可能性もあります」