先発の成瀬善久(24)は立ち上がりの制球力に課題を残したが、今季からストッパーに転向する小林宏之(31)、米球界から復帰した薮田安彦(36)は、ともに無失点。YFK解体後、常に救援投手陣の不安定さがつきまとっていた。両ベテランの好調な仕上がりに、西村徳文・新監督(50)も手応えを感じていたようだ。
しかし、ライバル球団が上方修正した理由はほかにもあった。千葉ロッテがいい意味で、ドロ臭い球団に変貌しつつあるからだと言う。
「投手全体に言えることだが、粘り強くなったね。去年までは先発投手はスタミナ不足で、試合中盤になるとボールに勢いがなくなっていたけど、そうではない。打線も右方向へのバッティングを徹底したり、足を絡めての攻撃も仕掛けてくる。今年はキャンプの練習内容が充実していたしね」(ライバル球団スコアラー)
西村監督は口にこそ出さなかったが、チーム改革として真っ先に着手したのは『脱・バレンタイン』だった。前任のボビー・バレンタイン氏は名将ではあるが、「自分流がいちばん正しい」とし、コーチスタッフの進言に一切耳を傾けて来なかった。その下でヘッドコーチを務めた経験が言わせたのだろう。各マスコミが「どんなチームを作りたいのか?」と質問すると、必ず『2つの要素』を口にする。1つは「機動力野球」だが、2つ目のコメントが意味シンだ。
「コーチにやる気を出させるためにも、彼らの意見をどんどん取り入れたい」
そんな西村監督は、投手陣についてこうも語っていた。
「去年とメンバーがガラリと変わるかも」
投手陣を預かるのは、元巨人の西本聖コーチ。沖縄県・石垣島キャンプでは、こんな光景も見られた。ブルペンでの投球練習中、大嶺祐太(21)がストライクゾーンを連続して外した。西本コーチは捕手からボールを奪い取り、ホームベース上に置いた。
「走って取りに来い!」
ブルペン全体が緊迫した空気に包まれたのは言うまでもない。
同コーチは今キャンプで各投手に「2000球以上」のノルマを課した。根性論とも取れる指導だが、昨年、全体練習の少ないメジャーを経験した井口資仁でさえ、「こんなに練習をしないチームは珍しい」と嘆いていた。ぬるま湯に浸かり切ったチーム体質を変えるには、こうした厳しい時間も必要だったのだろう。
「見ているだけでは巧くならないし、考えているだけではレベルが上がらない。投げて覚えるんだよ」
西本コーチらしい言葉である。
キャンプを観た限り、西村監督の言う投手の新戦力とは、2年目の木村雄太(24)のことかもしれない。昨季は一軍登板ができなかったが、木村の投球には目を見張るものがあった。
大切なのは、体力と知力のバランスだ。知力に偏りがちだった千葉ロッテは、オープン戦でその変貌ぶりを発揮しつつある。(スポーツライター・飯山満)