関係者が驚きを隠さないのは、その投資マネーのボリュームだ。歴史的な株安にもかかわらず、判明した企業の時価総額だけでトータル3兆5800億円。半年で約1兆円増えている計算になる。むろん、ベスト10に登場した企業に限ってのことで、公表されていない11位以下の企業も含めると金額はさらに膨らむ。どの道、膨大な金が注ぎ込まれているのは間違いない。
問題は存在感を増す一方で、その正体が定かではないことだ。登記上の本社はオーストラリアにあり、香港上海銀行東京支店が常任代理人を務めているが、市場関係者は「OD05オムニバスは配当を受け取るための信託上の名義にすぎません。そのため、所有者などの詳細はベールに包まれており、中国政府系ファンドではないか、との見方が定着しています」と解説する。
中国の外貨準備高は円換算で世界最大の約300兆円を誇り、これを国家外為管理局と国策ファンドの中国投資有限責任公司が運用している。前者は主に米国債で運用しており、後者は株式や債券などで運用している。従ってOD05オムニバスは「後者の別働隊」との見立てである。
中国政府の強力な後ろ盾があれば運用マネーには事欠かず、前述した時価総額3兆5800億円にしても氷山の一角にすぎないのは明らか。それどころか、市場の株安に乗じて積極果敢に買いまくり、次々と経営権を奪取できる。打ち出の小槌をガッチリ握っているのは最大の強みで、その気にさえなれば標的はゴロゴロしているのが実情だ。
「まだ会社とガチンコ対決するような行動を取っていませんが、これで業績不振と株安のダブルパンチに見舞われた場合、いつまでも物わかりが良い株主であり続ける保証はありません。本気で牙をむいたら修羅場になる。だから日本を代表するトップ企業でさえ、内心では戦々恐々としています」(大手証券マン)
OD05オムニバスが大株主に名を連ねるのは、いずれも日本が誇るトップ企業ばかり。オリックス(保有比率3.8%=株主順位4位)、日立製作所(2.9%=3位)、コマツ(2.5%=6位)、三井物産(2.4%=3位)、ソニー(2.4%=4位)、武田製薬(2.2%=5位)、東京海上HD(2.3%=4位)、ホンダ(2.2%=7位)、トヨタ自動車(1.9%=9位)、NTTドコモ(0.9%=4位)などだ。
いくら「現時点では配当金を受け取るだけ。総会での議決権行使は控えている」(情報筋)といっても、いつ“物言う株主”の本性を現し、あの『村上ファンド』の向こうを張ったアクティビストに豹変しないとも限らない。慈善事業ならばともかく、より大きなリターンを得なければ「運用者の責任問題になる。これが投資の鉄則」(関係者)とあってはなおさらのことだ。